舌を噛み切れ

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　圧巻であった。ダンダンッ‼ 床を蹴る足音さえ寸分のズレも無く揃ってしまうのだから文句の付けようも無い。テヨンたちは悔しさに唇を噛みながら3人のステージを眺めていた。
　曲負けすることも無い迫力のあるしなやかなダンスが眩しくて、どうしようもない実力差を思い知る。


　曲が終わってバックダンサー達が現れる。人気なモテ一軍男子を盗られたダンスクラブとしては悔しさ天元突破である。滑らかな連携でラスサビ部分まで歯痒いながらも惹き込まれてしまうのが、更に悔しさを増長させる。

　そして此処で男子と絡みのあるキリングパート。どセンターで「あのパクジフン」と抱き合って、太腿の上で手を重ね、腰を合わせる。
　瞬間、突風。暑さ緩和の為に開き切った全体の窓を風が通り抜ける。美しい美顔が晒される。前髪が持ち上がってAの顔が覗いた。本人は一瞬目を見開いて、開き直った様に妖艶に左手で髪の毛を掻き上げた。無防備に露わになった右の首元にジフンがキスをする。
　いやあぁあぁぁああ、と歓声が上がり女子たちの阿鼻叫喚である。至る所から悲鳴が飛び交う。ぶっつけ本番でのアクションで、接触が激しいのは完全にダニエルの思惑である。ナナと接触したいが為の振り付けではあったが無事にその目的を達成させていた。

「はっ、いい反応」
「王子様やるじゃんか」

　最後にそのままポーズをとって、ジフンがAを後ろから抱き竦めた。ジフンがAの髪を耳に掛けて己の方へと向ける。満足げに優しくAの顔を見つめるジフンに其処彼処から色んな意味での悲鳴が上がる。
体育館が発狂しているみたいだ。
　それを受けてAは、悪戯っ子の様な笑みを深めてニィッと白い歯を見せつけた。ビジュアル暴力コンビの爆誕である。

「A、盗られちゃうねえ」
「っ、ヌナから何か聞いてるんですか」
「秘密ー」

　ジニョンはスアの手を離しながら問いかけても静かに微笑んでいなされてしまった。
　女子ダンス部は出番を終えたので捌けなければいけない。だと言うのにブレることのないマイペースでスアはジニョンのポケットにIDを忍び込ませた。

「慰めて欲しかったら連絡してねぇ」

　Aとナナと一緒にスアは舞台袖に消えた。ほぼ答えの様なものではないか。ジニョンは今はステージ、と心を切り替えつつも、何処か納得した様にジフンを一瞥した。
　_____ヒョンならいっか、て思ったりして。

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