28. ページ29
.
「ない、論外」
スラックスの上の部分を指差してAは不服を表す。折角の勇気を振り絞って言った申し出はバッサリと断られた。
「痛いじゃん、それ」
「…手出した俺が悪いからいい」
「今回は私が悪かったよ、ごめんね」
「誘惑に負けたの俺だし」
「真面目かよ、ジフニのそういうとこ好き」
「軽率にそういうこと言うな」
普通の女子には安易にそれを受け取って手を出す男である。知らぬが仏であろう。
そんなジフンが謝ると言う点で既に気付くべきだが生憎Aは好かれてるなど露にも思っていない。可哀想な奴である。
「ベベに嫌われてさ、去年遊びまくったんだけどさ」
「ストレス発散すんの下手かよ」
「過去じゃん、ジフニが私に構ってくれるから最近は遊んでないし」
「ジニョンと、やってないの」
「だってべべ手出してくれないし、露出もいい顔しないし、水着の面積で怒るんだよ?親かよ」
大概鈍い奴である。薄々勘付いていたジフンはやっぱりかよと遠い目をしながら頷いた。
_____両想いじゃん、俺ただの邪魔者じゃね??大方、彼奴が彼女作った理由も嫉妬させるため、とかだろうな。
ヒョン可愛い、可愛いと笑顔で言ってくれる後輩は最大の恋敵である。なんて嫌な巡り合わせであろうか。
「魅力無いのかなて思って不安だった」
「…あー、そう考えると悔しい」
「なにが」
「欲に負けた…クッソ」
「私は安心したけど」
けらけらと愉快そうに笑ってAはジフンの手を握る。ひんやりとした指先が、茹だるような暑さを和らげる。
「夜遊びやめたら」
「それあんたが一番言えない言葉だわ」
「だってお前好きな人いるし、ジニョンそういうの嫌なタイプだろ」
「ベベ彼女いるし気にしないでしょ」
同じ狢の穴である。ジフンはキスのせいで取れたグロスを塗ろうとスティックを取り出す。少し思案してからリップバームの方に切り替えた。鮮やかな紅色だ。
「ジニョンに今日の夜会える?」
「呼び出せば来ると思うけど」
「ならさ」
健気で甘いジフンは結局Aの応援をするのである。呼びかけてAの唇に色が映るほど優しいキスを繰り返した。Aは驚いたが抵抗しなかった。ジフンの色が落ちて完全にAの色になった頃合いで唇を離す。そして己の唇にスティックのグロスを塗りたくった。可愛らしい桃色がよく似合うことだ。
耳打ちで作戦を伝えると納得したようにAは頷いて、Aのピアスを片耳差し出した。
50人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こー - いえいえ!わざわざありがとうございます(涙)楽しみにしてました!読ませていただきますね! (2020年5月25日 0時) (レス) id: 15c5b103b3 (このIDを非表示/違反報告)
FIX(プロフ) - こーさん» 遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。今日やっとお話あげたので、まだ気があれば是非読んで下さい。感想待ってます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: e6fb1d1801 (このIDを非表示/違反報告)
こー - お久しぶりです( ^_^ )投稿したお話って何日くらいしたら見れるんですかね?? (2020年5月20日 23時) (レス) id: 15c5b103b3 (このIDを非表示/違反報告)
FIX(プロフ) - こーさん» コメントとても嬉しいから大丈夫ですよ〜笑笑 ありがとうございます、地道に頑張ります。1日ほどお待ち下さい〜! (2020年5月12日 1時) (レス) id: e6fb1d1801 (このIDを非表示/違反報告)
FIX(プロフ) - springさん» 会社の同期で話進めてるので、幼なじみ設定である人を出そうと思います〜。リクエスト送って下さったのにすみません、幼なじみのお話はまた別の機会か、並行で書かせて頂こうと思います。次作も何卒よろしくお願いします〜! (2020年5月12日 1時) (レス) id: e6fb1d1801 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:FIX | 作成日時:2020年4月8日 11時