舌を噛み切れ

03. ページ3

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「なに、言ってんの」
「？綺麗だねっていう話。散々言われてるでしょ？？」

　ジフンは返答に困って眉を顰める。どう言う反応をすればいいのか迷っているのだ。
　_____もしかしてこいつ、聞いてなかった？いや、それはないか。
　裏の顔がバレたから口止めをしようと思ったのに、Aは何食わぬ顔で「綺麗だね」と言ったのだ。あまりのズレに顔を歪めたら痛みが走った。

「あー、そこ座って」
「は？何するの」
「手当てー、これでもオッパの助手ですので」

　全くの嘘である。勝手にAが名乗っているだけである。オッパが誰か分からなかったジフンはしばし思考してイデフィに思い当たった。

「いらない、自分でやる」
「でもさ、痛いじゃん？私のが絶対うまいって」
「なんでお前に」
「オッパに保健室預かってますから、お駄賃払わなきゃいけないの。黙って座って、ほら目閉じて」

　無理矢理にAに腕を引かれ、Aのベッド(勝手に私物化している。保健室は彼女の根城である)にジフンは強制的に座らされた。
　反論しようとしても手を瞼に添えられて強引に視界が閉ざされた。

「なんでケガしたの」
「隣のコートからボール飛んできたのがあたった」
「あー、やっぱり？庇ってたもんね」
「は？何で知ってんの」

　あんた目立つからね、と静かに言ってAは消毒液を染み込ませたガーゼをおでこにつけた。ジフンは痛みを堪えて息を一つ溢した。

「あーあ、美に傷が付いた。世界の損失…」
「…大袈裟だろ」
「少なくともあんたが笑顔振り撒いてる子たちにはショックでしょ」
「言ったら殺すからな」
「わざわざパクジフンの作ったイメージ壊したりしないって。ファイティン王子」

　煽るようなAの口調はデフォであるがそれを知らないジフンは苛立ったように脅す。Aはそれも軽くあしらってテキパキと処置を終えていく。

「ソヌ・A。絶対に言うなよ」
「秘密にするよ。もし私が言ってたら私の秘密もバラしていいからさ。これでど？」
「は、何。あの、ソヌ・Aの秘密って」

　あの、を態々強調しても気にする様子もない。ジフンが訝し気にきくと、Aはあっさりと答えた。

「ペジニョンの幼馴染みなの」

　自分と同じく、女子男子共に人気な少女漫画顔の後輩だと理解するのに時間は要らなかった。

「あのソヌ・Aがペジニョンの幼馴染みで、ペジニョンを好き。これ以上ないスキャンダルでしょ？」

　そう言って愉快そうに浅く微笑んだ。

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