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王子と呼ばれている彼からは想像もつかない声だった。愛嬌たっぷりのプリンスボイスではなく、苛ついた棘のあるトーン。
_____やっぱりこの子裏あるのね。
「はあー、顔やるとか有り得ねえわ」
喋ってはいけない。動いてもいけないし、バレてもいけない。分かってはいるけれど、あの美貌に傷が付いたとなると矢張り気になってしまうのだ。
いくら本人が八方美人を極めたとこが苦手だとしてもAは彼の顔は嫌いではない。寧ろ好きな部類である。何故なら美形。これ以上の理由はいらない。
動揺からか震えた手先からボトルのキャップが落ちてしまった。
「(あー、やった……)」
「誰か、いるの?」
明らかに怒気が含まれた質問に答えられるはずもない。狸寝入りの振りをしてやり過ごそうと思った。
覆い被さる影。目を少しでも開けば終わりだ。人の気配がぐっと近付いて耳元に吐息がかかる。
_____いや、反則ですよ。
あの美少年の顔がこんなに間近にあれば是非拝み倒したい所ではあるが、そんな行動を起こせばジ・エンド。積みである。
「ねぇ、起きてるんでしょ」
「んっ」
どろっどろに甘い響きが耳を擽って思わず声が漏れた。耳が弱いのか息が吹きかかるだけで頬を赤く染めてしまう。ゾクゾクと全身に奇妙な感覚が走った。
ね、ソヌ・Aちゃん?名前を呼ばれて遂に目を開けてしまった。
「おはよう」
息を呑んだ。氷並みに冷たい視線がAを見下ろし、可愛らしいスマイルを称えているのに目がこれっぽっちも笑っていない。
「盗み聞きまでは良かったけど、狸寝入りは」
途端の真顔。あまりの温度差にさっき迄の蒸し暑さなど等に忘れていた。
「ねぇわ」
酷く不愉快だ。隠す気のない感情を当られて思わず瞬きをした。パチクリ。効果音がつけばそうなるのであろう態度をAはとる。
怒りを浮かべても崩れることのない美貌にらしくもなく驚いてしまう。寧ろそれすらも可愛さに変換されるかの様で流石美少年パクジフンと納得すらしていた。
_____怒っててもこの子、すっごい可愛い。
ズレた人間である。奇天烈なAの性格は他人に合わないらしく遠巻きにされることが多い。しかしながらその変テコな感性は図太さを彼女に与えたらしい。
あまりの反応に思わずジフンも拍子抜けする。肩の力が抜けて口を開けたまま黙ってしまった。
「本当に、綺麗な顔してるね」
「……は??」
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こー - いえいえ!わざわざありがとうございます(涙)楽しみにしてました!読ませていただきますね! (2020年5月25日 0時) (レス) id: 15c5b103b3 (このIDを非表示/違反報告)
FIX(プロフ) - こーさん» 遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。今日やっとお話あげたので、まだ気があれば是非読んで下さい。感想待ってます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: e6fb1d1801 (このIDを非表示/違反報告)
こー - お久しぶりです( ^_^ )投稿したお話って何日くらいしたら見れるんですかね?? (2020年5月20日 23時) (レス) id: 15c5b103b3 (このIDを非表示/違反報告)
FIX(プロフ) - こーさん» コメントとても嬉しいから大丈夫ですよ〜笑笑 ありがとうございます、地道に頑張ります。1日ほどお待ち下さい〜! (2020年5月12日 1時) (レス) id: e6fb1d1801 (このIDを非表示/違反報告)
FIX(プロフ) - springさん» 会社の同期で話進めてるので、幼なじみ設定である人を出そうと思います〜。リクエスト送って下さったのにすみません、幼なじみのお話はまた別の機会か、並行で書かせて頂こうと思います。次作も何卒よろしくお願いします〜! (2020年5月12日 1時) (レス) id: e6fb1d1801 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:FIX | 作成日時:2020年4月8日 11時