じゅうはっぴき ページ18
＊
「待って」
そう言って私の腕を掴んで引き止めたのは侑だった。
何事かと彼の方を見た治に素早く目配せすると、治には何かが伝わったらしく一瞬だけ瞳の奥がキラリと光ったのが見えた。
「まぁ、とりあえず座り」
「日がもう沈んじゃうよ？」
「ええからええから」
私を再びベンチに押し戻して、彼らもまた同じように座った。
「見ててな、今からめっちゃすっごいことやるで！」
･･････それ「今から面白い話しまーす！」と同じ原理なんじゃないだろうか。
侑の宣言を受けてこれから何が始まるのかと思えば、
「「･･････」」
二人は黙って夕空をジッと睨んでいるだけで、特に何か起きるわけでもなかった。
いささか拍子抜けして、彼らが一体何をしたかったのか訳もわからず眺めていた。
「･･････来た」
1分もした頃だったろうか。
その沈黙を破ったのは治だった。もう大分日が沈みかけているらしく、彼らの頭には既に狐耳が戻っている。
「お姉さん、走って帰んで！」
「え、ちょ、何！？」
今度は無理やり立たされ、突然のことに目を白黒させていると、急に頬に何かが降ってきた。
「･･････雨？」
ポツポツと地面に染みを作っていただけのそれは、次第に激しさを増していく。
空には遠く離れた入道雲しか見えず、雨なんて降ってきそうもないのに。
「な、な、すごいやろ？」
「いいから早く帰るよ！！ずぶ濡れになっちゃう！！」
慌てて走り出した私たち三人に、容赦ない雨が叩きつける。
「ちょっとばかし威力強すぎたな、治！！」
「天気雨じゃ誤魔化しきれんわ、侑！！」
走りながらそんな風に言い合う二人は満足げで、この雨が『狐の嫁入り』であることを私はふと思い出した。
「日差しカンカン照りより雨の方が涼しくてええやろ？」そう言った侑と、珍しく黙ってそれに同調した治の横顔に、何か懐かしいような、奇妙な感覚が私の胸にせりあがってきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 176人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅蓮姫百合桜 - この作品とても愛してます！！←これからも更新頑張ってくださいね！！応援してます！！(*ﾉωﾉ) (2018年4月21日 16時) (
レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
ててすけ - ぷりんさん» 狐の本能がそうさせてしまうんでしょう・・・・・・ありがとうございます、頑張ります！ (2018年2月25日 16時) (レス) id: 94a89dce7c (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - そっか、そっか。うさぎのこと追いかけたくなるのか狐だから…。更新楽しみにしてます！頑張ってください！ (2018年2月25日 5時) (レス) id: a100b6f437 (このIDを非表示/違反報告)
ててすけ - ブリトーさん» 本当ですか！？そう言って頂けて嬉しいです！ (2018年2月17日 11時) (レス) id: 94a89dce7c (このIDを非表示/違反報告)
ブリトー - 面白すぎです！ 狐のときの行動がかわいい…笑 この作品は毎日かかさずいつ更新されてもいいようにチェックしてます！ (2018年2月15日 20時) (レス) id: 392a87bd96 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ててすけ | 作成日時：2018年1月25日 14時
