You.03 ページ4
.
徹が私に別れを告げた、正しくは私が言わせたに等しいのだけれど、その翌日には私と彼との間の繋がりはさっぱりと無くなり、彼にとって私は同じ大学に通う何千人のうちの一人、というポジションに成り下がっていた。
徹にはバレーが命だと、彼自身も思っていたし、私だってその他の周りの人だってそう思っていた。
だから大学に入ったのもバレーをするためだったのに、徹にとっての一番の誤算がそこにあった。
彼は、バレーを凌ぐほどの想いの対象を見つけてしまったのだ。
徹はそんなことを決して口にはしなかったし、バレーと私がいればそれでいいや、なんて心の底からそう思って笑っていた。
けれどそれは、彼自身が、自分の心を見ないようにしていたというだけのはなし。高校の時からずっと隣にいて早6年、誰よりも徹を理解している自負のあった私を誤魔化すことは、やっぱり出来なかったみたいだ。
一番の理解者なんてならなくてもよかったなぁ、今まで通り彼のとなりに居られるなら、あんな気持ちを分かりたくなんてなかったなぁ、と今更ながら後悔してみるのだけれど。
_徹は、ひとつ年上のとっても美人なバレー部の先輩に、恋い焦がれてしまっている。
彼の試合や練習風景を見に行くたびに、その疑問ははっきりと形をなし、しまいには疑いのない確信となってすとんと、私の心に腰を下ろした。
徹は私を好きでいてくれたけど、その気持ちに偽りがない分、他にもう一人心を寄せている人がいることに、ひどく辛い思いをしていたのだと思う。無自覚だったのだけど。
だから最近の徹は私をものすごく可愛がったし、離れまいとしていた。
離れてしまえば知ってしまう、冷静になれば自覚してしまう、もうひとつの想い。
それを誤魔化そうとして、己を麻痺させるように私の側にずっといた。
私は、徹にちゃんと選んでほしかった。
自分がどちらを真剣に愛し、守り、側にいると誓うのかを。
それで私でないほうが選ばれてしまったとしても、そこに後悔はない。
ずっと一緒にいられればそれは素敵なことだけど、不安が影をなし、自信が息を潜めているのなら、そんなものは虚しいだけだと思うから。
だから、ゆっくり考えて。
私が徹を思う分、徹が私を不器用にでも愛してくれていたことを、私はちゃんと分かってる。
.
57人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
radio-co.(プロフ) - 励ましのコメントありがとうございます!文庫化なんて畏れ多いです汗 言葉を大事にしすぎて一言一言が重苦しくなるのが欠点でして……。もう少しラフに書けるといいなー書きたいなーと思っています笑 これからも是非応援宜しくお願いします(/\)\(^o^)/ (2017年12月29日 16時) (レス) id: ee8f50fb78 (このIDを非表示/違反報告)
radio-co.(プロフ) - どっどっどうもありがとうございます!(#^.^#) 文章力とストーリーの両方を誉めて頂けるなんて、これほど嬉しいことはありません!あやせさんのこの言葉を励みに更新頑張っていきますので、これからも温かく見守ってくださいね。 (2017年11月29日 17時) (レス) id: ee8f50fb78 (このIDを非表示/違反報告)
あやせ(プロフ) - あっあっあの、好きです(語彙力) 引き込まれるストーリーと綺麗で丁寧な文章表現、本当にすごいなと思いました。これからも応援させていただきます…!! 更新楽しみにしてます〜(*^^*) (2017年11月22日 16時) (レス) id: a236a20ef8 (このIDを非表示/違反報告)
radio-co.(プロフ) - ユラさん» 大変な誉め言葉をありがとうございます!汗 更新が不定期で申し訳ありません。ここから皆の恋愛が動いていきますので、これからもどうぞよろしくお願いしますね。 (2017年10月2日 16時) (レス) id: ee8f50fb78 (このIDを非表示/違反報告)
ユラ(プロフ) - 凄く大人っぽいのに読みやすくて、あっという間に夢中でした!やばいこれ超良作じゃん!とか言って一人で騒いでます笑。及川くん達のこれからがとても気になるので、更新、お願いします!! (2017年9月26日 0時) (レス) id: 9a45404af6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:phobia | 作成日時:2017年2月18日 10時