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You.07 ページ13

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「うん」

ごくんと口のなかにあった肉じゃがを飲み下し、何てことないかのように箸を進める。

「だってそれ…側で見てろってこと?」

先ほどから一静は、缶ビールにだけちょびちょび口をつけ、目の前の食べ物には目もくれない。

「腹立つよねえ」

笑い声の大きくなったテレビに目をやり、ぼーっと見つめる。
腹立つよね、ほんと。私がずっと好きだった関係も距離も誰のせいで手放したと思ってるんだか。
でも私を頼ってくれた。遠ざけずにいてくれる……


「腹立つとか、そういうんじゃなくてさ」

ブチ、と消滅する画面。映るのは呆けた顔の私と、起こったような一静の顔。
反射的にそちらを振り向く。

「いつまでもAが自分を好きだって、傲ってるような態度が気に入らないんだよ」

カタリ、と小さく音をたてたほとんど空っぽのビール缶。
ふいに伸ばされた腕がそっと私の体を包み込む。


「Aが…及川をずっとずっと思い続けるんだろうなって分かるよ。どんなに離れたって、Aは、及川しか自分にはいないんだって、直感的にそう思ってるの知ってる。」


耳元の声が熱い。お酒のせいだ、もう、酔ってるのだろうか。
だけど酔っていようといまいと、彼の言葉が何かに浮かされたが故のものでないことは分かる。
心配してくれているのか……一静の、低くて穏やかな声を、ここまで掠れさせる原因はなんなのだろう


「だけど、…そう思ってるのは、Aだけだよ。他の男は、そう思ってないから、ほんと。だから油断しないで、隙見せないで。
預けられないくせに、心開くなんて残酷なこと……しないでよ」


はぁ、と熱いため息を吐いて、首筋に彼の鼻先が触れる。くすぐったい。
ふかりと乗っかる唇、けれど及川のそれとは違う、弾力のあるそれ。
ちゅ、ちゅ、と優しく私の肌をなぞって、少しずつ、上へ上へと。
最後に耳たぶへ小さく口づけると、ぐらぐらに揺れた、一静の細い目と目があった。


「…俺言ったからね、警告したからね」

「うん」

「うん、て……だってこれ許したら、もう」

「いい、……離さないで」

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設定タグ:ハイキュー!! , 及川徹 , 松川一静   
作品ジャンル:恋愛
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radio-co.(プロフ) - 励ましのコメントありがとうございます!文庫化なんて畏れ多いです汗 言葉を大事にしすぎて一言一言が重苦しくなるのが欠点でして……。もう少しラフに書けるといいなー書きたいなーと思っています笑 これからも是非応援宜しくお願いします(/\)\(^o^)/ (2017年12月29日 16時) (レス) id: ee8f50fb78 (このIDを非表示/違反報告)
radio-co.(プロフ) - どっどっどうもありがとうございます!(#^.^#) 文章力とストーリーの両方を誉めて頂けるなんて、これほど嬉しいことはありません!あやせさんのこの言葉を励みに更新頑張っていきますので、これからも温かく見守ってくださいね。 (2017年11月29日 17時) (レス) id: ee8f50fb78 (このIDを非表示/違反報告)
あやせ(プロフ) - あっあっあの、好きです(語彙力) 引き込まれるストーリーと綺麗で丁寧な文章表現、本当にすごいなと思いました。これからも応援させていただきます…!! 更新楽しみにしてます〜(*^^*) (2017年11月22日 16時) (レス) id: a236a20ef8 (このIDを非表示/違反報告)
radio-co.(プロフ) - ユラさん» 大変な誉め言葉をありがとうございます!汗 更新が不定期で申し訳ありません。ここから皆の恋愛が動いていきますので、これからもどうぞよろしくお願いしますね。 (2017年10月2日 16時) (レス) id: ee8f50fb78 (このIDを非表示/違反報告)
ユラ(プロフ) - 凄く大人っぽいのに読みやすくて、あっという間に夢中でした!やばいこれ超良作じゃん!とか言って一人で騒いでます笑。及川くん達のこれからがとても気になるので、更新、お願いします!! (2017年9月26日 0時) (レス) id: 9a45404af6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:phobia | 作成日時:2017年2月18日 10時

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