【無印イナイレ】最強少女と天才少年２【鬼道有人】 (ページ29)

今日:10 hit、昨日:2 hit、合計:3,335 hit

第７６話少女の過去ページ29

※渚side※

Aはすっかりお見舞いに来なくなってしまった

最後にAが訪れてから、一体どれほどの日々が過ぎたのだろう

渚｢...ついに嫌われちゃったか、私｣

本心で思っていないことを呟き、病院のベッドから外の景色を眺める

何一つ変化のないその景色にはもう飽き飽きだ

渚｢つまんない...けど退院したって、行く場所なんてないんだよなぁ…｣

誰にも聞こえることのない、孤独な呟き

(人間は皆自分勝手...私のお母さんとお父さんみたいに)

私の体には、消えない傷痕がたくさんある

両親から受けていた虐待が何よりの原因だった

母も父も、私をストレスの解消口としか...“物”としか見てくれなかった

(家を飛び出して、正解だと思ってた)

その時に助けてくれたのが、私とAがいた孤児院の院長だった

それから私の生活は、驚くほどに激変した

美味しいご飯に、たくさんの友達...

(“物”としてじゃない...初めて“人間”として生きていられる場所だった)

けれどそんな幸せも、あまり長くは続かなかった

自分の体を犠牲に、事故からAを助けたからだ

(それからは退屈な病院生活...

暴力を振るわれ続けるのよりはマシだけど)

正直、Aを助けたことを後悔してない...と言えば嘘になる

今、こうしてAに見捨てられてしまったからだ

渚｢誰のお陰だと...｣

(どうせ病院生活の私と違って、温かい家族に囲まれて幸せに暮らしてるくせに...)

風のうわさで、雷門中がFFの地区初戦を突破したことを聞いた

自由に生活できるAが羨ましくて...憎かった

その時ふと、私はあることを思い出す

(そういえば...Aは“あのこと”には気付いたのかな)

それは、私と鬼道だけが知るAの秘密だった

彼女自身も気付いていない...彼女の“兄”に関する秘密だ

(けど、“あのこと”が事実だったとしたら、それに気付かないまま過ごすのも大変だと思うけどね...

ま、私にはもう関係ないか)

心の中でそう呟き、私は寝そべるベッドの上で寝返りを打つ

ベッドの軋む音が、病室に静かに響いた