第６話 お父様 ページ8
帝国の人間であった私にとって、“お父様”と“総帥”は同一人物だ
“影山零治”
帝国学園の総帥であり、今の私の父親...
今私が生きていること、帰る家があるのは全て影山のお陰だ
そのことに対しては凄く感謝している
けれど彼の“やり方”や“考え”を、私は理解し肯定することができなかった
何度も理解しようとはしたが…できなかった
──敗者に存在価値はない
...果たしてそうだろうか？
敗れることでしか見えない・分からない・気付けないものが、私は存在すると思う
そもそも“血の繋がり”のない父親の考えなど、いくら頑張っても理解できないだろう
...私と影山の間に、“血の繋がり”はない
...私の帰るべき家に、“家族の暖かさ”はない
幼少期を孤児院で過ごしていた時、私は影山に引き取られた
私を引き取ってくれた理由は知らないが、おそらく“サッカーが得意だった”とか、そういう単純なものだろう
引き取られた時...影山の手を取ったあの日を恨んだことも、もちろんあった
あの日、彼の手を取っていなければ
私は今頃、幸せに暮らせていたのかもしれない
しかし、戻れない過去に泣いたって意味はない
私はそれを痛いほど知っている
帝国にいた際、私は父親やサッカー部とはあまり関わらなかった
サッカー部のマネージャーではあったが、私は練習や試合にほとんど参加しなかった
“あんなにも残酷なこと”を見ていたくない、という理由と、もう一つ理由があった
サッカーに関わると、どうしても醜く辛い過去を思い出してしまうから
私が、孤児院に身を寄せることになった理由...
私には“お母さん”と呼べる相手がいた
私には“お兄ちゃん”と呼べる相手がいた
けれど、そんな平凡で穏やかな日常は...
“お父さん”と呼ぶべき相手のせいで、全てが壊れた
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作者名：紫苑 | 作成日時：2018年4月7日 1時
