第４２話 豪炎寺夕香 ページ44
病室に入ると、そこにいたのは先程姿が見えた女の子
眠っているその女の子が目を覚ます様子はない
豪炎寺 ｢夕香っていうんだ...もうずっと眠り続けてる｣
円堂 ｢ずっと...？｣
豪炎寺 ｢全部話すよ...じゃなきゃお前、帰らないだろ...？｣
私は何も言わず、ただ静かに豪炎寺の話に耳を傾ける
彼の妹が事故に遭ったことは知っていたが、詳しいことは何も知らなかった
豪炎寺 ｢...夕香は、去年のFF決勝戦の時からずっとこうなんだ｣
A ｢帝国と、木戸川清修の試合だね…｣
私はその試合を、帝国のベンチから見ていた
(あまり試合を見に行くのは好きじゃなかったけど...お父様にどうしてもって言われたっけ
...今思えば、あれは豪炎寺君のことを認識させるためだったのかも…でもあの時、豪炎寺君はいなかったような...)
豪炎寺 ｢こいつ、楽しみにしてたんだ...必ず応援に行くって言ってた｣
妹の話をする豪炎寺の表情は、とても切なく、悲しいものだった
豪炎寺 ｢夕香の笑顔を見たのはそれが最後だ
スタジアムに急ぐ夕香は...｣
円堂 ｢そんなことが...｣
豪炎寺 ｢事故のことを聞いたのは、試合の直前だった｣
(だからあの時、豪炎寺君は試合に出てなかったのか...)
豪炎寺 ｢急いで病院に向かったよ...この病院には親父が務めてて、俺が転校したのもそれが理由だ｣
豪炎寺は淡々と話を進めていく
豪炎寺 ｢俺がサッカーをやってなきゃ、夕香はこんなことにはならなかった...｣
A ｢......｣
豪炎寺 ｢夕香がこんなに苦しんでいるのに、俺だけのうのうとサッカーをやるわけにはいかない
だから俺は...｣
彼の話に、何も言えなかった
(豪炎寺君...)
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作者名：紫苑 | 作成日時：2018年4月7日 1時
