第３１話 悪夢 ページ33
毎日が幸せだった
...はずなのに
｢やめてお父さん...お母さんに手出さないで！｣
その叫びは遠く...
助けを求めて伸ばした手は、誰にも届かない
｢やだよぉ...お母さん、お兄ちゃん...｣
悲劇は一瞬で起こった
｢一人にしないで...置いてかないでよぉ...｣
握った母と兄の手は冷たかった
｢うっ...うわぁぁぁぁぁぁっ！！｣
その日私は...世界を恨んだ
A ｢...っ！！｣
慌てて目を開けると、そこにあったのは部屋の天井だった
A ｢やだ、夢......｣
私は悪夢にうなされていたようだ
しかもそれは今日に限ったことではなく、昨日も一昨日も、続けて悪夢に起こされていたのだ
ゆっくりとベッドから起き上がる
酷い眩暈と頭痛が襲ってきた
A ｢ホント、最悪だ...｣
頭を抑えながら立ち上がる
ふらつきながら、何とか寝室を出た
洗面台に置かれたコップに水を入れ、一気に飲み干す
鏡に映る自分の姿は、酷くやつれて見えた
私以外に誰もいない家は静寂に包まれている
(普通ならありえないよな、中学生が一人暮らしなんて...)
そんなことを考えながら、私はリビングのソファに腰掛ける
深夜二時を指す時計の、針の音だけが響いている
私は部屋を見回し、ふと棚の上に飾られた写真に目を止めた
幼い頃の私と、その隣で無邪気に微笑む一つ上の兄、二人に寄り添う母の姿が写っている
父親は写っていない
(そういえば...全部燃やしたっけ、お父さんが写ってる写真...)
そんなどうでもいいことを思い出しながら、私は昔のことを思い出す
あまり思い出さないようにしているが、先程悪夢に見てから、思い出さずにはいられなかった
(お母さんとお兄ちゃんは...私の目の前で...)
そこまで考えて、私は頭の中から昔の記憶を打ち消した
辛い過去のことなど、思い出さない方が...なるべく考えない方がいいに決まってる
(それに、思い出したって無駄...お母さんとお兄ちゃんが帰って来るわけじゃない...
もう二人は、この世には...)
その日、私は眠れないまま夜を過ごした
戻れない過去に、涙を流しながら…
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作者名：紫苑 | 作成日時：2018年4月7日 1時
