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第１０話 戻れない日々 ページ12
逃げ出した壁山を待つ間、私は昔のことを思い出していた
もう戻ることはできない、“あの頃”の記憶...
“あの頃”は幸せだった
私の傍でいつも彼が...有人が笑っていたから
有人と笑っていられたから...
辛く苦しい“自分の身に起きた悲劇”も、忘れることができた
ベンチに座る私は、静かに目を閉じる
今でも鮮明に思い出せる、幼い有人の笑顔...
(いくら願っても無駄だとは分かっているけど…また、あの頃みたいに笑い合える日々が戻ってくるって…そう願わずにはいられない...)
何もかもが、認めたくない現実だった
有人とのお別れも、影山のやることをただ見送っていた日々も、今この瞬間も...
全て夢だったらいいと、そう思っていた
そしてその度に、夢ではなく現実だと痛感させられる
(もう、うんざり...誰かを助けるとか、敵とか仲間とか...)
私はただ、平凡で、それでも幸せな毎日が続けばいいと、そう思っていただけなのに…
一体いつから私は、悲劇の主人公になってしまったのだろう
...本当の父親が事件を起こしたあの日から？
...有人と別れたあの日から？
...影山の手を取ったあの日から？
それとも最初から...運命は、決まっていたの？
(誰か...誰か教えて...)
──私に平凡など来ないのですか？
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作者名：紫苑 | 作成日時：2018年4月7日 1時
