44 ページ44
崇裕 side
Aと会わんようになって、1年が過ぎようとしとる。
Aが居らんくなった部屋はガランとしとって、こんなに広い部屋やったっけなんて思ったりもした。
……いつだか一緒に祝える言うてた誕生日も、せっかくの二十歳やのに祝ってやることはなかった。
あの子の笑う顔も、楽しそうに料理する姿も、感情のままにコロコロ変わる表情も、、もう2度と見ることはないんやって、なんとも言えへん感情に襲われた。
……俺も好きやって、言えたらどんなに良かったやろう。
俺がまともな人間やったら、、、あの子の側で、ずっと守っていってやりたかった、、。
きっと優しいAのことや、俺がほんまの気持ちを、、自分を信じられへん気持ちを打ち明ければ、あの子はすべて受け入れてくれたに違いない。
俺は父親とは違うって、俺のことを信じて一緒に乗り越えようとしてくれたやろう。
……そんな優しいAやからこそ、怖かった。
、もし俺が、、、手を上げるようなことがあっても、
あの子はそんな俺を、許してしまうんやないやろか、、、。
……Aは気付いてへんと思うけど、あの子は音にやたら敏感なところがあった。
ドアを少し強く閉めてしまったときや、うっかり物を落とした時。
あの子は無意識に身体に力が入る。
…植え付けられた恐怖心は、そう簡単に無くなることはない。どれだけ本人が気にしてへんつもりでも、心の奥底ではきっと傷が残っとる…。
これ以上、あの子を傷付けるようなことがあってからや遅い。……これで、良かったんや、、、。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふう
| 作成日時：2022年11月30日 22時
