検索窓
今日:7 hit、昨日:8 hit、合計:19,703 hit

ページ27

「・・ありがと。わがまま聞いてくれはって。」

ちゃんと真剣に伝わるように大吾が言葉を紡ぐと、「わがままちゃうやろ?」と一呼吸置いた後、和也が言った。

「お遊戯会ってあれやろ?子供たちが親にこんだけ成長したで!って見せるやつ。それがどんなん大事で手抜いちゃいけないもんか、おれにもなんとなく分かるねん。おれ大吾のわがまま聞いてるつもりないで?」

真っすぐに大吾を見つめてそう口にした和也。

・・・あぁ、完敗や。どこまでも、永遠に、やっぱりこの人の懐の深さには一生敵わへん。

そう大吾は一瞬顔を床に向けて口角を上げると、また和也のほうに向き直り、「せやな。ちょっと言い方ミスったかも。・・・ほんまありがとうやで。・・よろしくお願いします。」と微笑みながらまるでダンス教室の生徒のように頭をペコリと下げる。

「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。」

和也も真似て普段教室でやっているであろう挨拶をペコリ、と返してきたので、頭を戻した後、二人は可笑しそうに笑った。

それから「ちょっとテレビ繋ぐな?」とテレビ画面いっぱいに先程のミュージックビデオを映し、早速振り付けに取り掛かった和也。

ソファーに腰掛けたまま先程海外のダンサーの動画を見ていた時と同様、真剣な表情で手と足を軽く動かし、「ここはしょるか」なんて独り言を呟きながら何やら手元の紙に絵やら字やらを書いていく。

和也はダンスを踊って人に教えることは勿論、元々趣味で考えるのが好きだった振り付けも最近仕事に組み込んで力を入れている。

少し離れた所でその姿を見守る大吾は、こうやって振り付けしていくのか、と思いながらも、普段あまり見ない和也のその姿がとても新鮮でもあった。

休み休みやりながらも、夕方には自分の中で納得したものが大体出来上がったようで「大吾、踊ってみるか?」と声がかかる。

「・・・先生お願いします。」

大吾がそう答えると、「頑張って覚えてな?」と和也はくしゃっと笑う。

それからというものの。

「いち、に、さん、し!で右や。大吾それ左やで?、ちゃうちゃう、一回おれの見ててや?・・・そこで足閉じる、んーとな、ワンテンポ遅いねん。」

・・・果たして大吾は無事子供たちに教えることができるのだろうか。

しばらくレッスンは続いたが、「あー!もう無理かもしれへん!」と家中に大吾の愛らしい叫び声が響き渡る。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (25 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
67人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ゆあ(プロフ) - yuyuさん» 初めまして。読んでくださってありがとうございます。そして嬉しいコメントありがとうございます(;;)とっても励みになります…面白いとのこと、何よりの褒め言葉です…これからも私なりに頑張らせて頂きますので引き続きよろしくお願い致します…(>_<) (2023年1月31日 14時) (レス) @page20 id: cd3765bd37 (このIDを非表示/違反報告)
yuyu(プロフ) - お話の文章がうますぎてその光景がすぐ頭に浮かんできます。お話もとっても面白くて吹き出すのを堪えながら読んでます笑笑こんな面白いの読んだことない笑笑これからも頑張ってください! (2023年1月31日 11時) (レス) id: 086589b12b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:中津結亜 | 作成日時:2022年12月30日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。