・ ページ2
「・・うるさ。」
「ええ？！ちょま、なんでや？！」
和也には素直になれないらしい。
「丈くんはよ行かんと遅刻するんちゃう？」
まだ寝間着に前髪をポンパドールにした駿佑の一言に「やっべ！駿佑ありがとう！」と鞄を引っ掴んで玄関へ向かう丈一郎。
流星が手鏡を手にアイラインを引きながら「騒がしいなぁ」と優しく笑った。
恭平が続けて出勤し、スイーツ店で働いている流星も「今日新作スイーツの試食会あるから帰りちょっと遅なるな？」と言い残して家を出た。
「あれ謙杜は」「なぁ謙杜な」
リビングに和也と駿佑が二人きりになると、同じタイミングで思いついたように声が被る。
大吾は洗面所で歯を磨いている。
和也が「ん？」と言いながら駿佑にお先にどうぞ、と手で合図すると「ありがと。謙杜なんだけどさ、ちょっとだけ喉ひゅーひゅーする言うてて二階でまだ横なっとる。」と駿佑の口から驚きの言葉が。
「え、そうなん？朝？さっき？はよ言うてや。」
謙杜は人よりちょっとだけ、体が弱い。
「おれがわざわざ言いふらすのはなんかあれやろ」
真面目な顔つきで見つめてくる駿佑に和也は一瞬考え込むと。「・・ん。・・久々やな。朝部屋覗いたん？謙杜どんな？」
「少し咳してた。でも感覚でわかるんやて、大丈夫なやつやって。今日出勤する日やったらしいけど、念のため休む言うてた。」
最近元気にしていた謙杜。持病の症状が出たのは大分久しぶりだ。
一概には言えないが、人の幸せは健康でいることが前提に生まれるものであるからとにかく元気でいてほしい、和也はそう強く思うのである。
「薬、ちゃんと自分で枕元に置いてたで。なにかあったら連絡な！って念押ししてきてあるから。」
さっき恭平が大きくなったって話題にしてたが、駿佑も確実に頼もしくなってきている。
そういう感覚を、瞳や顔つきからなんとなく感じ、全身を巡った和也から出た「ありがと、教えてくれて。」は少し震えた声をしていた。
．
「うーーまい！！なにこれ！！」
口にクリームをつけて飲み込まないうちにそう叫ぶのは謙杜。
「うまいやろ〜？よかったぁ」
目を輝かせて「ふふ」と笑いながら咀嚼する謙杜の背中を流星が「ゆっくり食べるんやよ？」とさする。
新作スイーツの試食会で店頭に並ぶこととなったスイーツを、帰宅した流星は一番に謙杜の部屋に持って行っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 67人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆあ(プロフ) - yuyuさん» 初めまして。読んでくださってありがとうございます。そして嬉しいコメントありがとうございます(；；)とっても励みになります…面白いとのこと、何よりの褒め言葉です…これからも私なりに頑張らせて頂きますので引き続きよろしくお願い致します…(＞_＜) (2023年1月31日 14時) (
レス) @page20 id: cd3765bd37 (このIDを非表示/違反報告)
yuyu(プロフ) - お話の文章がうますぎてその光景がすぐ頭に浮かんできます。お話もとっても面白くて吹き出すのを堪えながら読んでます笑笑こんな面白いの読んだことない笑笑これからも頑張ってください！ (2023年1月31日 11時) (レス) id: 086589b12b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：中津結亜 | 作成日時：2022年12月30日 22時
