アレルギー（翔）8 ページ8
「・・・ん、ありがと。みんな動揺してるのは同じなのに、うん、なんかごめん、・・・ッ」
自分の顔を手で覆ってそう呟いた松潤。
そのまま上下に額をこする。一向に顔から離れない手。
おいらは椅子を立って松潤の横に立つと、おいらより高い位置にある松潤の頭をポンポン、と撫でて軽く引き寄せた。
ヒクッと松潤の肩が揺れた。
松潤の嗚咽がこだまする中、にのと相葉ちゃんに視線を送れば、つい数秒前まで松潤を励ましていたはずの彼らまでもが表情をなくして立ち尽くしていた。
みんな怖かったと思う。
医者のおいらたちは知っている。
どれだけアナフィラキシーショックというものが恐ろしいかを。
もしかしたら今頃翔くんはいなかったかもしれない。
一周まわってやっぱり結局辿りつくのはその恐ろしさであって。
・・・翔くん。休んでるところごめん。早く帰ってきて。
早く元気な姿を見せてくれないと、多分おいらたち、壊れちゃうわ・・・。
〜翔side〜
苦しい。
苦しい。
苦しい。苦しい。苦しい。
あー、アナフィラキシーショックだなって。
すぐに分かった。
苦しみながらも頭はグルグルと冷静に分析してて。
でもどんどん海の底に溺れていくような感覚。
自分の呼吸音が気持ち悪い。うるさい。
それ以上に苦しい。
死にたくねぇよ。てか、まだ死ねねぇ。
死ぬわけにはいかない。
・・だけどもう限界だわ・・・。
ああ・・くっそ・・ッ
俺のまわりで四人がバタバタ動いているのが分かる。
ごめん、智くん、
ごめん、雅紀、
ごめん、にの、
ごめん、潤・・・。
〜潤side〜
午前中の外来が終わり、食堂にいる俺。
目の前で箸をつけられていないままホカホカと湯気をあげているうどんを頬杖をつきながら見つめて「・・・はぁ・・・」と溜め息をつく。
そのままうどんをボーッと数秒見つめ続け、不意に上がってきた咳をケホッと一つ小さく漏らす。
「大丈夫？食欲ないの？」
そんな声がふと聞こえ、空いていた隣の席にカレーライスが乗せられたトレーが置かれる。
振り向くと、まーの姿。
まーと食堂で会うなんていつぶりだっけ？なんてこれまたボーッと考える。
「おつかれ」
そう声をかけながら頬杖をつくのをやめ、軽く座り直す。
ガタリ、とまーが椅子を引き、俺の隣に座った。
「おつかれ。・・・具合悪いの？平気？」
まーの心配そうな瞳に俺が映る。
「・・・ん。ちょっと食欲ないだけ、大丈夫。」
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作者名：中津結亜 | 作成日時：2021年1月19日 18時
