PARACAGE 4th【ars】 (ページ5)

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110.夜の訪問者。ページ5

雅紀くんは私に宣言した通り、テラハウスに女の子を連れて帰って来る事は無くなった。
ただ外泊はあるし、とんでもなく酔っ払って帰って来る事もある。

その度に、雅紀くんがあんな顔で落とした言葉を思い出して苦しくなる。

そんな彼を見て「不器用だね、ホント...」と、ニノくんが小さく呟いてるのを聞いた。
酔ってソファに倒れ込んだ雅紀くんの頭を、翔さんがクシャッと撫でたのを見た。

・

ある日の夜、私は仕事帰りに買って来たメンストの最新号を部屋で読んでいた。

この号も表紙は咲くんで、大きな手で顔を半分隠して舌を出して笑ってる。
格好良い。
本当に格好良い。

数ヶ月前の私なら、勢いで三冊とか買ってたかもしれない。
素直に「このヤンチャな感じ、珍しい！」って喜んで、アカリと興奮して騒いで。
でも今は、やっぱり単なるファンだった時と同じ気持ちでは見れなくなった。

格好良いのが、苦しくて、でも好きで、苦しくて、だけど見ていたくて、苦しくて。

何だか、ページを捲る度に疲れてしまって読み終わった頃にはクタクタだった。

「......」

もう一度表紙を見てから、例の咲くん棚の蓋を開けてその中に並べる。
ついでに、そこにコッソリ飾ってる写真立ての中の咲くんを見て、小さな溜息を吐き出した時

部屋のドアがノックされた。

「はーい」
「オレー」
「ニノくん...？」

どうしたんだろう。
ドアを開けると、彼が「よ」って片手を挙げた。

「どうしたの？」
「こないだAさぁ、デニムのワンピース着てたじゃん？」
「あー、うん」
「あれ、貸してくんない？」
「ニノくんが着るの？」
「似合うとは思うけど、着ない」

うん、似合うとは私も思うけど。

「パターン引いてみたい、可愛かったから」
「私が？」
「ワンピースが」

このやろ、って言うと
ンフフーってニノくんが笑う。

「仕方無いなぁ、良いよ」
「サンキュ。Aも可愛いよ」
「不思議だなぁ、嬉しくない」
「あれー？感情籠ってないからかなぁ」
「わー、この人サイテー」

あーぁ...なんてわざとらしく大きな溜息を吐きながら、備え付けのクローゼットの中からワンピースを出して彼に持って行った。

「はい、どうぞ。仕事熱心だね」
「んー、探究心なのかな」
「そのパターンが引けたら、違う布でも同じワンピースが作れるの？」
「え？当然でしょ、その為のパターンでしょうが」

「バカだねー」って言ったニノくんが、私の部屋の奥を見て「あれ？」って呟く。