PARACAGE 4th【ars】 (ページ22)

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127.本気ですか。ページ22

雅紀くんは、私にその話をした事を忘れようとしてるかのようにお酒を飲んだ。
何度も「もうやめた方が良いよ」って止めたけど「だいじょぶ！」ってお代わりを続けて、その内に目がトロンとして喋り方も甘ったるくなって来て。

迂闊にも「超絶可愛い...」って思っちゃったけど、さすがにこれ以上はダメだと雅紀くんのオーダーを無理やりストップした。

「まだ飲みたかったのにぃ」
「そんな呂律も怪しくなった人に、これ以上飲ませられません！」
「けちぃ。けちけちぃ」
「はいはい。何とでも言って」

バルを出てからずっとツンケンしてるのは、雅紀くんが私の肩に覆い被さるようにして歩いてるから。
そのまんま顔を私の方に向けて喋るから、息が耳だの頬だのにかかるんだってば！
ちょっとでも強い態度で居なきゃ、腰が砕ける...！

「雅紀くん、とりあえず駅まで頑張って歩いてね？」
「歩いてるよぉ？」
「それにしては私に体重預け過ぎじゃない？すっごい重い」
「それはぁ、俺がAちゃんに引っ付きたいからでしょぉ？」
「......」
「フフフッ」

...笑い事じゃないから。
顔が硬直するのが自分でも分かる。

雅紀くんの腰を抱いて、ふわふわしてる彼を支えるようにして歩く。
細い細いと思ってた彼の腰は、骨ばっていてやっぱり男の子だった。

「ねぇAちゃん」
「ん？」

もうすぐ駅って所で、雅紀くんが立ち止まって視線をどこかへ向けた。
何を見たんだろう？とその視線を追う。

「帰らないってゆー選択肢、作る？」

私達が『帰らない』って事は、テラハウスに帰らないって事。
雅紀くんの視線の先には、外資系のシティホテル。

「......」

何も言わずに、至近距離にある雅紀くんの目を見る。
彼も、肩を抱いたままジィっと私の目を覗き込むからまるで見詰め合ってるように人からは見えるかもしれない。

「...本気で言ってるの？」
「どう思う？」
「からかってるんだなーって...」
「もし本気だったら？」
「それは...どうしたら良いか分かんない...」

もう心臓が尋常じゃ無いくらいに胸を打ち付けて来るから、とうとう雅紀くんから目を逸らして地面を見た。

「アハッ。Aちゃんは、酔った勢いなんて無いよね」
「......」
「帰ろ！かーえろ！」

歌うように言って歩き出した雅紀くんに、今度は私が引っ張られるみたいになる。

『酔った勢い』って言葉が、何だか悲しかった。
『本気』って言われたかったんだ...って、自分の願いに気付いた。