PARACAGE 3rd【ars】 (ページ29)

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99.ノック。ページ29

その後、四人とも二階に上がってそれぞれの部屋へ。

鶯色の部屋の前は、やっぱり息を止めて歩いてしまう。
ニノくんはわざとらしい大声で「おやすみー！」って言いながら、黄色いドアの部屋に入って行った。

私も自分の部屋に入り、すぐベッドに潜り込む。
つい癖で雅紀くんの部屋の方に身体を向けて寝てしまったけど、あの壁の向こう側で...と思うと心臓が痛くなって来て逆側へ寝返りを打った。

目を瞑って眠ろうとするんだけど、そうすればする程眠れない。
明日仕事なのに...

目覚まし時計の秒針が進むわずかな音さえ耳障りになって、どこかに隠してしまいたい！と布団から出た瞬間に

隣の部屋から、小さな小さな物音が聴こえた。

本当に小さな、音だったのに。
それは私の耳に届いてしまって、思わず耳を塞いだ。

何の音なんだかは分からない。
てゆーか雅紀くんの部屋から物音がするなんて、しょっちゅうある事だ。
でも、その物音を立てたのが今日は雅紀くんじゃないのかもしれないって思ったら、もう駄目だった。

「......」

私は静かにベッドを下りて、部屋を出る。
足音を立てないように廊下を歩いて、端っこの部屋。
青いドアの前で立ち止まる。

ひとつ息を吐き出して、そのドアをノックした。

すぐに開いたドアから、智くんが顔を出して「どうぞ」って中に招いてくれる。
自分で来たくせに、いざとなると何だか図々しい気がして「あ、やっぱり...」って首を振ったら

「逃げて来たんでしょ？良いよ、おいで？」

彼はそれだけ言って、先に部屋の中に戻って行った。

ずっとそこに立ってるのも、それはそれで迷惑かな？と思ったから、「お邪魔します」と部屋に足を踏み入れてドアを閉める。
ニノくんの部屋とも、また違う『仕事部屋』って雰囲気。
本棚にたくさんの絵本が並んでて、イーゼルもあればPCもあるし、智くんが座ってる机の上には水彩絵の具や水入れ。

「おれ、仕事してるから寝ないしベッド使って良いよ」

ドアの前に突っ立ってる私に、智くんが言った。

「ちゃんと毎日ファブリーズしてるし、臭くは無いと思うから」

本当にベッドサイドにダウニーの香りのファブリーズが置いてあって、ちょっと笑ってしまった。

「あ、もちろん干してるし！」
「フフッ、知ってますよ」

私、智くんが布団をずるずる引き摺って縁側まで運んでるとニゴが布団にじゃれついてなかなか進めないのを見るのが、何だか癒されて好きなんだもん。