PARACAGE 3rd【ars】 (ページ3)

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73.名前をつけてやる。ページ3

「雅紀、仕事は？」

翔さんが訊く。

「今日はオフ！んー...コーヒー飲んだらもう一眠りしよっと...」

雅紀くんは欠伸しながらダイニングを出て行った。
私は無意識に息を止めてたのかもしれない。
その瞬間に、はぁぁ...と息が漏れた。

「あ、Aさん...朝からあんな話、気分悪かったですよね？潤も言葉に気を付けなさい」
「え？俺も怒られんの？遊んでんのは雅紀なのに？」

潤くんがムゥと口を尖らせた。

「あ、翔さん大丈夫ですよ！私、そーゆーの全然...あの、全然平気なんで！」

本当は、本当に、全然平気なんです。
下ネタ男子に好感度上げちゃうような奴なんです、いつもだったら。

でもダメだ...
これはダメだ...

「おはよ...眠ぅ...」

ダイニングにニノくんが入って来て、そのまま椅子にドスンと座った。
位置としては、私の目の前。潤くんの隣。

「A、それちょっとちょーだい」

ニノくんが私のマグを指差す。

「コーヒー、飲むなら淹れようか？」
「ううん、ちょっとで良いからそれちょーだい」

そう言って、勝手に飲む。

「そう言えば、さっき上で相葉さんに会ったんだけど」

私にマグを返しながらニノくんが話し始めた。

「もしかして、連れ込んでる？マグ二個持ってた」
「うん、そうみたい」

また始まったの？っていうニノくんの言葉と重なるように、私は「準備しなきゃ！」って立ち上がって「ニノくん、コーヒー全部あげる！」って笑ってダイニングを出る。

洗面所で歯を磨いて、顔を洗って。
部屋に戻って、メイクをする。

ファンデーションを塗り終えた時、ふと壁を見てしまって

嫌でも、その向こうに居る二人を想像してしまって

「......あ、ヤバ...」

泣いてる自分に、焦った。
頬に流れた涙をティッシュで押さえながら、アイメイクする前で良かったー...なんてどうでも良い事考えて。

それでもなかなか涙が止まらなくって、結局頬に涙の筋が入ってしまってファンデーションもやり直し。
シートタイプのメイク落としで拭き取りながら、それでも泣きやむ事が出来なくて。

こんなタイミングで、私は自分の気持ちを自覚した。

名前を付けたらいけないって思ってた想いに、こんなタイミングで名前を付けてしまった。

『恋心』なんて、恥ずかしくなるような名前をこんな絶望的なタイミングで。

恋してるのは、勘違いだと思いたかったのに

私は、もう手遅れな位に雅紀くんに恋を始めてたんだ...。