PARACAGE 3rd【ars】 (ページ12)

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82.香り。ページ12

潤くんは自分で作った炒飯を食べてお風呂へ。
翔さんは、早寝だからもうお部屋に。
お風呂を終えてたニノくんも、仕事を始める智くんも2階に行ってしまった。

さっきまでガヤガヤしてたリビングは、私と雅紀くんの2人だけ。

雅紀くんはソファに寝転がり、スポーツニュースを観てる。
野球の試合VTRに「良い試合！」とか「ホームラーン！」なんて合いの手を入れながら。

私はと言うと、帰ってきてからまだ着替えても無かったからか、何だか居心地悪くて.....
...違うか...。雅紀くんと2人っきりなのが居心地悪いんだ...。

『すてきな片想い』ならまだしも、私のそれは『絶望的な片想い』
そんな事を自覚してしまった今、この状態は嬉しいんだか辛いんだか、何だかよく分からなくて軽くパニックで、だから居心地悪いんだ。

もう私も部屋に戻ろう...
そう思ったのに。

雅紀くんが、ソファから降りて床に座ってる私の隣に腰を下ろした。

私の体の右側と雅紀くんの体の左側がピタッとくっつく。

「ずっと思ってたんだけどさぁ」
「...は、い...」
「Aちゃんって…」

雅紀くんが顔をこっちに向けたのが、気配で分かった。
でも、そっちを向けない。
心臓を直接触られてるみたいに、苦しい。

首筋に、彼の指が触れた。
そこから熱が広がって行くみたいに、体が熱くなっていく。

少しだけ雅紀くんの方を見ると目の前にある彼の目が、キュッと半月になった。
もう息も出来ない。

フッ、と微笑んだ雅紀くんが私の首筋に鼻を付ける。

「すっごく良い匂いだよね」

声と共に漏れる吐息が首にかかる。

「香水、何使ってるの？」
「...JIMMY CHOO...」
「へぇ。俺もそれにしよっかな」
「でも...レディース...」
「俺、女の子の匂いって好きなんだよね」

フフッと笑って、雅紀くんが首筋から顔を上げた。

下から見上げるように顔を覗き込まれて、目を逸らしてしまう。

首筋に触れてた指にツーっとそこを撫でられ、ギュッと目を閉じてしまったら雅紀くんがまた小さく笑った。

「家ん中で盛ってんじゃねぇよ」

いつの間にかダイニングに居た潤くんの声に私は焦ったのに、雅紀くんは「盛ってないってば」ってケロッとしてる。
呆れたように潤くんが溜息ついて、私を見た。

「A、風呂空いた」

はい、と応えたはずなのに声が出なかった。
立ち上がろうとしたのに、立てなかった。

そんな私の腕を雅紀くんが引っ張って、立ち上がらせてくれた。