PARACAGE 3rd【ars】 (ページ10)

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80.罪な人。ページ10

ビールを1杯飲み干したヒロシ君は、「腹減った、何か食うて良い？」と焼肉ピラフを食べて。
「喉渇く」ってもう1杯ビールを飲んで。

結局、私達と一緒にお店を出た。

アカリに約束が違うと言われたヒロシ君が、お会計を半分出してくれた。サンキュー、ヒロシ。

2人と別れ、電車に乗り、知らない間に寝てしまって。
起きたら最寄り駅で、慌てて降りた。
家に着くと、当然だけど電気が灯っているのが外からも分かる。
引き戸を開ける前に、呼吸を整える。

雅紀くん...居るかな...
あの女の人、帰ってますように...

祈るような気持ちで扉を開けると、中から雅紀くんの笑い声が聴こえた。
一瞬で心拍数が上がる。

「あ、Aさんおかえりなさい」

ちょうどお風呂から出て来た翔さんが、玄関まで歩いて来て「お疲れ様です」って労ってくれる。
仏様みたい。

「ただいま帰りました」

靴を脱ぎながら応え、家に上がろうとしたら自分のロングスカートの裾を踏んでしまって

「うわわっ！」

グラリと前につんのめった体を「おっと」と翔さんが抱きとめてくれた。
片手は肩に、片手は背中に。

「あ...すみません...！」
「フフッ、間一髪でしたね」

翔さんが、ポンポンと私の背中を撫でる。

「気を付けなきゃ、女性が怪我したら大変です」
「はい...ありがとうございます...」
「いえいえ」

背中に添えられてた手でポンッと1回だけ頭を撫でて、彼はリビングへと入って行った。

...あの仏様は無自覚に罪な人だ。
好きな人が他に居たって、あんな素敵な人に優しくされるとときめいてしまうのは悲しい女のサガ。

撫でられた頭を自分でもちょっと触れて、私もリビングに顔を出す。

「おかえりー」と迎えてくれた顔ぶれの中に、あの女の人は居なくてホッとした。
潤くん以外のみんなが、リビングに集まってる。

「おかえり、Aちゃん」

ソファに座ってる雅紀くんが振り返って、私に手を振った。
朝も着てたゆったりしたTシャツ。髪もモサモサのまんま。
きっと、彼は今日家から出てない。
出てても、コンビニ位だろう。

...あの人とデートしなかったんだ...

そう思ったら、ちょっとだけ胸の中が軽くなった気がした。

「こんなの詐欺だよなー」
「相葉ちゃん、格好良いね」
「雅紀は黙ってさえいれば...」

雅紀くん以外の3人が何かを見ながら喋ってる。

「Aも見てよ、これ。すげぇ詐欺だから」

ニノくんが私に見せたのは、白い表紙のブックレット。