PARACAGE 2nd【ars】 (ページ5)

今日:2 hit、昨日:28 hit、合計:1,766,613 hit

40.お昼とペンキ。ページ5

家に帰って、とりあえずお昼ご飯にしようって事でダイニングテーブルにパン屋さんの袋を置いた。

「Aちゃん、どれだっけ」
「メロンパンと焼きそばパンです」

向かい合わせに座った智くんが、袋の中からその二つを出して私の前に置いてくれる。
それから自分のチョココロネとコロッケパンと卵サンドを出しながら、「あ、飲み物持って来るの忘れた...」って呟いたから「私、入れて来ます！」ってキッチンへ行く。

冷蔵庫を開けて、ふと思う。
智くんって、パンには何を合わせるタイプなんだろう。
私は結構何にでもお茶を合わせるんだけど...。

「智くん、何飲みますか？」
「お茶ー」
「あ」
「ん？」
「一緒です。私もお茶」

そう言うと、彼はふふって笑った。

朝洗った水玉のコップに、またお茶を注ぐ。
それを持ってダイニングに戻り、パンを食べて。

お茶を飲んで、ちょっとだけのんびりして。

「さーてと。そろそろ始める？」
「はい！」

智くんと一緒に二階に上がって、「準備して来る」と彼は自分の部屋に入ったから私は自分の白いドアの前で待機。
暫くすると、刷毛とかペンキとか持った智くんが私の所までやって来た。

スウェットパーカーの袖を肘まで捲って、バケットの中に三色のペンキをトポトポ入れる。
混ぜながら微妙に調整してるのを、私はしゃがんで見てるだけ。

「コレくらいちょっとくすんでる方が可愛いよね」
「うん、可愛いですね！」
「もう少し白足して薄める？このままが良い？」
「あとちょっと薄い方が好きです」
「おっけー」

出来上がったさくら色を、智くんが刷毛に付けて私に「ん」って渡す。

「えっ？」
「記念すべき最初のひと塗りは、Aちゃん」
「えぇっ！？」

押し付けられる勢いで刷毛を渡されて、それをギュッと両手で握った。

「大丈夫！変になっても後で直してあげるから」
「変にって...」

思わずプッと噴き出してしまう。

「よし...！」

昔から色塗りが得意では無かった。
実は、前の家の壁だってムラだらけだった。
それでもまぁ、そのムラも味？私の部屋だし良いや！とか思ってたけど、ドアは共有スペースに面してるし...

そんな事を思ってたら、刷毛をドアの前まで持っていってもなかなか思い切れない。

「緊張ー...」
「いけいけー！」
「うわー！どうしよう！」

その時、智くんに手首を掴まれ引っ張られて

無理矢理に近い形で、私の持ってた刷毛は真っ白なドアの真ん中にドンッと当てられた。