PARACAGE 2nd【ars】 (ページ24)

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59.重なる。ページ24

「また入れてあげるから、怒っちゃ駄目だよ？」

智くんが私の頭をよしよしって撫でて立ち上がり、ニノくんの頭をパコンと叩いた。

「いてっ！何すんの！」
「意地悪しないの」

キッチンに入って行く智くんの背中に向かってむぅぅ...って顔したニノくんに、潤くんが「ガキか」って笑ってる。

「あ、潤くん。お昼ご飯って何か決まってんの？」
「あー、焼きそばでも作ろうかと思ってるけど」
「オレも食って良い？」
「うん、四人分作る予定」

やったー！って心の中でガッツポーズ。
潤くんのご飯、本当に美味しいから。

「じゃあ、飯の時間になったら呼びに来て貰っても良い？やんなきゃいけない仕事あって。お願いね？」

それだけ言って、ニノくんは部屋に戻って行った。

お昼過ぎ。
潤くんの作る焼きそばの良い匂いがダイニングにもリビングにも広がって来た。
縁側でニゴとお昼寝してた智くんも「良い匂い...」って起き上がった。

「Aー、そろそろカズ呼んで来てー」
「はーい」

キッチンから潤くんに言われて、私はいそいそと階段を昇ってニノくんの部屋へ。

「あれ...」

ノックする気満々で来たのに、ニノくんの部屋のドアが開いてる。
そぉ...っと部屋の中を覗く。

そこには、首にメジャーを掛け手首には針山を着けて、布を巻いたトルソーと対面してるニノくんが居た。

窓からの柔らかい光に照らされて、輪郭だけがぼぉっと浮かび上がって見えるのが

何だか、とても綺麗だと思った。

唇に、何本か針を挟んでる。
その針を使って布を留めて行く動きがしなやかで、まるで女性のようにも見えた。

「...ニノくん」

ニノくんがこっちを見て、唇に挟んでた針を針山に戻す。

「もう飯？」
「うん、潤くんが呼んで来てって」
「ありがと」
「お仕事...」
「そ。オレ、立体裁断の方が好きなのよ。でもうちに置いてたシルクピン足りなくなったから、さっき買いに行ってたの」

部屋の端にあるスチールラックにはたくさんの布がストックされていて、もう一体あるトルソーには服の形になった布が巻き付いてる。
デスクの周りにはデザイン画がたくさん貼ってあるし、思った以上に『仕事場』って雰囲気の部屋。

「あー、腹減ったー！」

そう言いながら廊下を歩くニノくんの首筋に、柔らかそうな髪。

『ニノ、好きな人ちゃんといるよ』って智くんの言葉と

『好きになったら、何でも良い』って言ったニノくんが重なる。