PARACAGE 2nd【ars】 (ページ19)

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54.覚悟。ページ19

「でもさ、俺モデルするには小さいし無理無理！って断ってたんだよね」
「そうなんですか！？」
「毎日働いて、お給料貰って、この先も好きな服をお仕事にして行けるんだなーって幸せだったし」

口角をゆるっと上げて、雅紀くんが視線を下げた。

「でも熱心に誘われてね？仕方無いから『読者モデル』って形で雑誌とか出てて。その内、こんな仕事もあるんだなぁ...って思い始めて」

うんうん頷く。

「その頃かな、メンストの専属オーディションがあってとりあえず受けてくれって頼まれた」
「......」
「けど合格したら会社は辞めなきゃいけない。オーデション受けるって事は、全部覚悟しなきゃいけなかったの」
「...そうですよね」
「でもまぁ受かるとも思ってなかったんだけど、たまたま読者の等身大になるようなモデルが欲しかったらしくって。俺がピッタリだったんだってさ。ラッキーだよね、アハッ」

誌面で見てる限りでは全然小さくも感じなかったけど、確かに他のモデルさんと並んでる写真では雅紀くんが一番身長低かった。
でもそんなの関係無い程、『咲』ってモデルには華がある。

「予想外に受かっちゃったから、会社を辞めて...正式に事務所に所属して、今に至る」
「そうだったんですか」
「超不安だったけどね！言ってみたら毎月定額のお給料を貰ってたサラリーマンが、そうじゃなくなるんだもん！」

アハーって楽しそうに話してるけど、結構シビアな事。

「でもさ、モデルなんてチャンスを見付けなきゃ就けない職業でしょ？しかもチャンスを見付けたって、それを掴めなきゃお仕事は来ない」
「......」
「俺は、やりたい！って言ったからってなれるワケじゃない、そんな肩書きを貰ったんだ」
「......」
「それに気付いた時、自分に賭けてみる人生も良いかもなって腹括ったの」

雅紀くんに対して、格好良い...と思ったのは、もう何度目か分からないけど。
この格好良いって想いは、少しの『咲くん』も感じてない想いだった。

単純に、シンプルに、覚悟した『相葉雅紀』という人を格好良いと思った。

「あ、ワッフル。美味しそう」
「あっためてチョコ掛けてみました」
「俺も欲しい」
「じゃあ作って来ま...」

立ち上がろうとしたら、手首を雅紀くんに掴まれる。

「Aちゃんのをちょっとくれたら良いの」
「これを...？」
「うん」

ワッフルの端をナイフで切ってフォークに刺し雅紀くんに差し出すと

「食べさせてよ」

彼は「あーん」と口を開けた。