PARACAGE 2nd【ars】 (ページ17)

今日:1 hit、昨日:22 hit、合計:1,766,673 hit

52.朝ご飯。ページ17

潤くんが一階に下りて行き、それを見送り部屋に入ると窓が開けっ放しになってた。

「閉め忘れてたんだ...」

ザックリ言うと『一人暮らし』では無いから、ちょっと気の緩みが出るのかもしれない。
窓を閉め忘れるなんて、前の家では絶対ありえなかったもん。

窓を閉める為にそこまで行くと、庭にリビングの灯りが漏れてるのが見える。
そこには見えなくっても、雅紀くんが居る。

「......」

嫌になる。
息苦しくなる度に、何だか凄く嫌になる。

下から雅紀くんと潤くんの笑い声が聴こえて来た。
何を話してるのかまでは分からないけど、楽しそうな声。

そっと窓を閉める。
二人の声は、聴こえなくなった。

「あ...」

ベッドを見ると、開けっ放しの窓から入って来てたんだろう。
数枚の桜の花びらが、ベッドカバーの上に落ちていた。

鶯色の上に桜色。
その色は、まるで桜餅。
『なんか、桜餅みたい』と言った雅紀くんの声を、急に思い出して「うぅぅ...」と唸ってしまう。

花びらを拾って、何だか捨てられずにそれをチェストの上に置いて。
私はベッドにモゾモゾと潜り込んだ。

・

翌朝、遅番の私が起きた頃には家の中はシンとしてた。
きっと智くんは居るんだろうけど、まだ寝てるのかリビングにもダイニングにも誰も居ない。

ニゴも居ないから、きっと智くんの部屋の中。

「朝ご飯...何かあるかな」

キッチンで冷蔵庫を開けてみたけど、『潤』って書いてあるヨーグルトがあるだけ。
これを食べたらどんな目に遭うのか...

「怖っ」

パタンと冷蔵庫を閉めてキョロキョロすると、棚の上に例のワッフルが籠に入ってる。
この籠の中の物は誰が食べても大丈夫。
他にはミックスナッツとか、さきいかとかおつまみ系。

「ワッフルでいっか」

これをあっためてチョコクリームでも塗って食べるとするか。

袋からワッフルを出してトースターに入れる。
あったまるまでに電気ケトルでお湯を沸かしてコーヒーを淹れる。

ダイニングに座って、コーヒーを飲んでると誰かが階段を降りて来た音がした。
智くんかな？と思いながら、ダイニングの入口を見てるとそこから入って来たのは

「あ、おはよ！」

雅紀くんだった。
頭モサモサしてる。

「あー良い匂い。俺もコーヒー飲もっかな」
「あ、ケトルに一杯分ならお湯残ってますよ。冷めてるかもですけど...」
「冷めてる方が好き」

目尻にクシャっと皺を寄せて笑い、彼はキッチンに入って行った。