PARACAGE 2nd【ars】 (ページ16)

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51.赤い。ページ16

お風呂から上がって水でも飲もうかとダイニングをチラっと覗くと、ダイニングの電気は消えてリビングの方だけ灯りが点いてた。

そこには、さっきと同じように雅紀くんが縁側に座っていて

さっきと違うのは、傍に缶ビールが置いてある事。

雅紀くんはビールを一口飲んで、空を見上げた。
首に喉仏が、浮き上がる。

歌でも歌ってるのか、その口元が小さく動いてる。

声を掛けようかと思ったけど、掛けられなかった。

息苦しさが、どんどん加速してる気がした。
姿を見る事が出来るだけでも、嘘みたいで、夢の様なのに。
それ以上なんて、無いのに。

胡坐をかいて夜空を見上げてる彼に対する自分の気持ちが、何だか、怖くなった。
その感情に名前なんて、つけちゃいけない。

私はそのまま階段を上がった。
喉は乾いてたけど、気付かない振り。

自分の部屋のドアを開けたら、紫のドアが開いた。

「あ」
「お」

出て来た潤くんは、右手に食べかけの桜餅を持ってる。

「まだ食べてたんですか」
「まだって言うか、今食べ始めたってだけ。風呂上がってからネットで動画観てて存在忘れてた」

これの、って桜餅をちょっとだけ持ち上げて見せる。

「でもお茶忘れたから入れに行こうかと思...」

潤くんが私の顔を見て、眉間に皺を寄せた。

「何かお前、顔赤くない？真っ赤」
「え？」
「まさか、熱でもあんの？」

潤くんの左手が伸びて来て、冷たい甲が私のオデコに触れる。

ちょっと首を傾げた彼は、甲を掌に変えてもう一度オデコに触れる。

「熱は無いか...」
「あ...お風呂上がりだから、かな...」
「湯あたり？気を付けろよ？」
「はぁ...アハハ...」
「笑い事じゃ無いんだけど。お前分かってる？風呂で倒れてみ？誰が助けんの？」

お風呂場で倒れる...住民の誰かが助けに来てくれる...って、私裸だよね！？
ここの住人って、男子だけ！

「気を付けますっ！」
「だろ？まぁAの裸見たって別に誰も喜ばないだろうけど」
「どーゆー意味でしょうか？」
「あー、雅紀だけは喜ぶかな」
「えっ」
「アイツ、女なら見境無さそうだし」

一瞬喜んだ私と、酷い言われようの雅紀くんに謝ってくれ。

「でも風邪だけはひくなよ？」
「あ...ありがとうございます」

心配してくれた。

「集団生活なんだから、一人が風邪ひくと連鎖する。迷惑」
「...はい」

そーゆーコトか。
だからさっき雅紀くんがニノくんに『潤ちゃんに怒られる』って言ったのね。納得。