PARACAGE 2nd【ars】 (ページ15)

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50.生意気なお口。ページ15

ニノくんの柔らかそうな髪が、白い首に沿う。
灰皿から薄い煙がゆるっと伸びて、消えた。

何故か。何故だか

ニノくんも一緒に消えちゃいそうだ、と思った。

普段は溌剌としてるんだけど、何かのバランスが崩れたらこの人は...

「Aちゃん、お風呂空いたよー」
「あ、はい」

雅紀くんがバスタオルを被ってリビングに入って来た。

「あれ、ニノちゃん寝ちゃったの？」
「あー、何か眠たいってずっと言ってたから」
「あららー」

ニノくんの傍らにしゃがんだ雅紀くんが、ユサユサと細い肩を揺らす。

「こんなトコで寝たら風邪ひいちゃうよー」

ユサユサ。無反応。

「風邪ひいたら潤ちゃんに怒られちゃうよー？」
「んー...」

あ、反応有り。

「起きようね？」

うわ、めちゃくちゃ優しい言い方！
キュン！どうしよう！自分が言われてる訳でも無いのに！

「んんー...」
「ねぇ、ニノちゃん」
「...うっせ...どっか行け...」
「もう、その生意気なお口塞いじゃおっかな」

塞いでー！！って私が言われてるんじゃないけど！！
って、何かもう雅紀くんに優しくされたくてニノくんがわざと起きないんじゃないか！？なんて馬鹿な事まで考えちゃう。

「キモッ！お前、それ通用すんのオンナだけなかんな！？」

あ、凄い勢いでニノくん起き上がった。
変な事考えてごめん。

「女の子になら通用するの？」
「えっ！？」

突然雅紀くんが私に向かってそんな事を言うもんだから、「さぁ...」って曖昧に笑っておく。

「あー...もう、気持ち良く寝てたのに...」

ニノくんが欠伸をしながら立ち上がり、「おやすみー」とリビングを出て行った。

「起こしてあげたのに文句言われた。まぁいつもの事だけど」

アハッて笑って、雅紀くんはさっきまでニノくんが寝転がってた場所に座る。

「お風呂上りに縁側で涼むのが気持ち良い季節になって来たねー」
「うん、そうですねぇ」
「夏は皆でかき氷作ったりすんの」
「へぇ！楽しそう！」
「Aちゃんは何味が好き？」
「んー、シロップも好きなんですけど一番は練乳かな」

雅紀くんが「うっそ、俺も！」って笑ってる。

「今年はAちゃんも一緒にかき氷パーティーだねー」

...何だか、息苦しくなって来た。

「じゃあ...私、お風呂入りますね」
「いってらっしゃい」

ペコっと頭を下げて、私はリビングを出た。
振り返ると、雅紀くんの背中。Tシャツ越しに、肩甲骨の形が分かる。

それだけで、また息苦しい。