PARACAGE 2nd【ars】 (ページ12)

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47.夜風。ページ12

ニゴがにゃあと鳴いたから振り向くと、智くんが目を擦りながらソファに座ってた。

「智くん、桜餅食べますか？」

私が訊くと、智くんは「食べるー」と言いながらこっちに来てニノくんの隣に腰掛ける。
食べ終わってた雅紀くんが4人分の温かいお茶を入れて来てくれて、それを飲んで皆で「はぁ」と幸せな溜息を吐き出した。

「おれ、仕事の続きしなきゃ...」

智くんがニゴを抱っこして部屋から出て行く。

「じゃ、オレ風呂ー」

ニノくんも部屋を出て行ってしまって、私と雅紀くんだけがリビングに残った。
...どうしよう。
このまんま2人っきりを密かに勝手に楽しむか、ドキドキしんどいから部屋に戻る...？

縁側から庭に脚を放り出した2人。
脚をブラブラさせると、雅紀くんもブラブラさせた。

「フフッ」
「フフッ、何ですか」

笑われて、つられて笑っちゃう。

「ここ、慣れた？」
「あー、慣.....」

...れたけど、一部に関しては慣れてない！
雅紀くんには、やっぱり慣れられる気がしない！
今だって、『咲くんと喋ってるよ』って冷静に考えたら倒れそうだし鼻血噴き出そう。

「ん？やっぱ男ばっかだから慣れられない？」
「ううん！慣れました！」
「アハッ、それはそれでちょっと悲しいなー」
「え？どうして？」
「男なのに、慣れられちゃったら...ねぇ？」

雅紀くんが、私の顔を覗き込む。

「ドキドキして貰えないって事でしょ？」

柔らかい息遣いが、頬に当たる。
心臓がこれ以上早打ちしたら、私は死ぬかもしれない。

ドキドキ、なんてもんじゃない。

雅紀くんは想像もしてないだろうけど、そんなもんじゃないんだ。

頬のホクロが好きで、触れてみたいと思っていた。

それが、手を伸ばせば...伸ばさなくたって少しだけ手を上げれば触れられる距離にある。

そんな距離に、雅紀くんの顔がある。

「男ばっかりの中に女の子1人、彼氏は反対しなかった？」
「.....彼氏...いません...」

喉がカラカラで、何か変な声になった。

「そうなんだ」

雅紀くんの口角が、緩く上がる。

私たちの間を、夜風が通り抜けた。

「相葉さーん、Aー、どっちでも良いけど風呂空いたよー」

ニノくんの声に思わず雅紀くんから目を逸らす。

「Aちゃん、入る？」
「やっ...あの、雅紀くんお先どうぞ」
「そ？じゃ、お先にー」

よいしょ、って立ち上がった雅紀くんがリビングから出て行くのと同時にニノくんがダイニング側から入って来た。