PARACAGE 2nd【ars】 (ページ10)

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潤くんは、きっと今日も遅い。
本当にお疲れ様...と毎日思う。

「ねぇ、どれにしよ」
「あ、そうだった。どれにしよ」
「せーので指さそ！多数決ね！」

雅紀くんの提案に、私達も乗る。

「せーの！」

指差したのは、雅紀くんがカレー屋さん。
智くんが、お寿司屋さん。
私は、丼物屋さん。

「ばらばら」

智くんがフッと吹き出しながら呟く。

「ジャンケンね！勝った人が選んだお店で注文！」

雅紀くんが言ったその流れでジャンケンして、勝ったのは私。

私は親子丼。
雅紀くんはカレー丼。
智くんは海鮮丼。

結果的に、みんな食べたい物が選べた。

届いた丼達を食べながら「丼屋さん最強」と雅紀くんが言う。

「何でこれに今まで気付かなかったんだろう」
「もっと早く気付いてたら、平和だったのにね」

二人が笑いながら話すから「何かあったんですか？」って訊くと雅紀くんが「デリる時は、いつも戦争だよ！」って何故かファイティングポーズ。

「絶対に食べたい物がバラバラになるんだよねぇ」
「でも誰も譲ろうとしない」
「だけど、出前は一軒でまとめて頼むってゆー謎のルールがあるから」
「血で血を洗う争いが起こるんだよ！」

んな大袈裟な！って笑うと、二人も笑った。

夕食を終えて、智くんはニゴをお腹に乗せたままソファで寝てしまった。

雅紀くんは縁側に座って、煙草を吸ってる。

それを私は、リビングの床に直座りしてテレビを観てる振りをして覗き見る。

雅紀くんの後姿越し、暗い空に紫煙がフワリフワリと伸びて行く。

傍らに、昔ながらの重たいガラスでできた大きな灰皿。

その灰皿に吸い殻をギュギュっと押し付けた雅紀くんが、そのままゴローンと上半身を後ろに倒した。
大の字になってる。

開け放たれた窓から風が入って来て、雅紀くんの髪を微かに揺らした。
その風が、私の髪も靡かせる。

風を、共有した。

胸がグゥっと苦しくなったのは、どうしただろう。

「Aちゃーん...」

仰向けになってる雅紀くんが、私を呼ぶ。
その声は、喉が絞まってるのかいつもよりちょっとだけ潰れてる。

「はい？」
「ニノちゃん、遅いねー...」
「あ、桜餅？」
「うん、桜餅」
「買って来てくれるかなぁ」

私が笑って言うと、雅紀くんは「文句言いながらも買って来るよ」って笑う。

「ただいまー」

二人で振り返ると

「なぁんだ...」
「なぁんだって...何なの」

雅紀くんにガッカリされた翔さんが立ってた。