PARACAGE 2nd【ars】 (ページ7)

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42.桜餅。ページ7

「Aちゃんのドアがお餅で、俺のドアが塩漬けの葉っぱ」

雅紀くんがドアを指差しながら、楽しそうに話す。
そう言われちゃうと、もう桜餅にしか見えない。

「相葉ちゃんのせいで桜餅食べたくなった」

智くんが呟く。

「ニノちゃんに買って帰って来てって頼もっか」
「あ、そうしよっか」

二人の間で『桜餅をニノくんに買って帰って来て貰う』って事が決まったらしく、雅紀くんがスマホを出して多分LINEしてる。

「じゃあ、おれちょっと昼寝しよっかなー…」

智くんがアクビをしたから、「本当にありがとうございました」ってお礼をすると「いーのいーの」って言いながら青いドアの中へ入って行った。

...廊下に雅紀くんと2人きりになってしまった。
彼は満足そうにドアに描かれた桜を見てる。

「あ...私も部屋に戻りますね」
「うん」

ドアから目を離してチラッとこっちを見た雅紀くんが、ニコリと微笑んだ。
はぁぁぁ...何だよもう、格好良い...
ここに引っ越して来てから一生分の『格好良い』を胸の中で叫んだ気がする。

さくら色のドアの中に入り、ふぅふぅふぅと小さな深呼吸。
やっぱり無理だ、雅紀くんの存在には慣れたつもりがドキドキだけには慣れる事が出来ない。

ポスンとベッドに俯せダイブして、ノロノロと首だけ動かして部屋を眺める。

「あ...やっと荷物片付けられるんだ」

部屋に置いてあるいくつもの段ボール。
引っ越して三日目には、実家に送っていた荷物を全部こっちに送って貰った。
洋服とか、何か色々。

夕方に家具が届いたら、これが片付けられる。
でもあの写真立ては、前みたいに飾れないなぁ......

とか、考えてたはずなのに。

目を開けると、明るかったはずの部屋が暗くなってる。
未だにカーテンの無い窓の外が薄暗い。

「...寝てた...」

俯せで寝てたからか、何か首が痛い。
ムクリと起き上がって首をコキコキ動かす。

「Aちゃーん！！」

えっ！？

思わずドアの方を見る。
でも、雅紀くんのその声はすぐそこから聴こえたって感じでは無い。

慌ててドアを開けても、やっぱりそこには誰も居ない。

「Aちゃーん！！何かでっかいの届いたー！！」
「...あっ！！」

家具！
急いで階段を駆け降りると、配達員のお兄さんと雅紀くんが大きな荷物を一緒に玄関に上げてる所だった。

「雅紀くん、ごめん！」
「ううん大丈夫ー」

こんな時なのに、重い物持って腕に浮き出た血管が素敵！とか思って本当にごめん！