PARACAGE 2nd【ars】 (ページ3)

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38.縁側。ページ3

その日は仕事が休みで、ちょっとゆっくり寝てからリビングに下りた。

平日だからみんなお仕事で、誰も居ない薄暗い部屋。
いつもより、ずっと広く感じる。

「おはよ、ニゴ」

ニゴが足元にすり寄って来た。
縁側の生成り色のカーテンを開けると、陽射しが入って来る。
窓も開けると、入って来る風と一緒に翔さんの読経が聴こえて来た。

母音が綺麗。
ついこないだまでは法事の度に眠たくなってたお経なのに、翔さんのそれは凄く心地が良い。

「桜...綺麗だね」

一緒に縁側に来てたニゴに話しかけて、そこに腰掛ける。
庭にある桜の樹が、八分咲き。

「もうすぐ満開だよー」

庭に放り出した足をブラブラさせながら樹を見上げてそう言うと

「だねー」と背後から言われて、驚き振り返る。

「おはよう、Aちゃん」
「あ...おはよう、智くん。ビックリした」

アハ、って笑うと智くんもあはって笑った。

「お茶、飲む？」
「あ、じゃあ頂きます」

智くんがキッチンへ入って行って、私は縁側で足をブラブラ。

「お待たせ」
「ありがとうございます」

私の隣に腰掛けて、お茶の入ったコップを私に手渡す。
薄く白い水玉模様が入ったコップ。

「綺麗ですね、桜」
「そうだねー。毎年見てるのに、今年も綺麗だなーって思う」
「そっか...私もこれから毎年見られるんだ」

お茶を一口。
智くんが身体の後ろに両手をついて、よりよく桜が見える体勢になった。

「あ、そう言えばさ」
「はい？」
「Aちゃん、ドア白いまんまにするの？」
「あー、そうなんですよねー...」

私もそろそろドアに色を塗りたいとは思ってるんだけど、何色にしようか決められない。
本当は鶯色にしたいけど、さすがにそれは出来ないし。

「色も何が良いのか分かんなくって...あ、それにペンキ塗りなんかした事無いから」
「おれが塗ってあげよっか？」
「え！？良いんですか！？」
「うん」
「プロに塗って貰える！」
「おれ、絵本描くプロだけどペンキは素人だよ」

あはーって笑った智くんに「お願いします！」って言うと

「任せなさい」って頭をクシャって撫でられた。

おっとー...ビックリした。
智くんは、時々こーゆー事をする。
だけど、ニノくんや雅紀くんの頭もよく撫でてるし、きっとニゴと同じ扱いなんだ。

「さくら色」
「え？」
「ドア、さくら色にしない？Aちゃん、桜の季節にうち来たんだし。綺麗な色だし」

智くんが桜を指差した。