PARACAGE【ars】 (ページ6)

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6.ドア。ページ6

二宮さんが白いドアを開けてる後ろで、隣の部屋のドアに目をやる。

「ん？どうした？」
「あ...綺麗な鶯色だなぁと思って...」
「あー、そのドアの色？」

隣の部屋は緑色に塗られてるけど、それはこないだまで私が住んでた部屋の壁と同じ鶯色。

「Aも好きな色に塗って良いよ」
「良いんですか？」
「うん、ってゆーか塗っとく方が良い」
「何で？」
「酔っ払いが間違えて部屋に入って来る事があんのよ。オレもそれでイタイ目にあったからな...」

何かを思い出したように、眉を顰めた彼が「ほれ、おいで」と私の部屋になる部屋へと入って行く。

部屋には、ベッドだけが置かれていた。
そのベッドの上には、圧縮袋に入ったお布団。

「それ、誰も使ってない一応新品の布団だって言ってたよ」
「言ってた？」
「寺の孫が。あ、孫もここ住んでんの」

よいしょ、とキャリーを床に寝かせた二宮さんに「二宮さんのお部屋は何色ですか？」と訊くと彼は「一緒に暮らすのに苗字に『さん』付けって、変じゃない？」と首を傾げる。

どうなんだろう...シェアハウスの常識なんか知らないから、何とも言えない。
でも郷に入れば郷に従えって言うし、ここは素直に聞いておく方が良いのかしら。

「じゃあ、何て呼べば良いですか？」
「よく呼ばれるのは、ニノ。それか、カズ」
「あー...ではニノくんで」
「了解」

あ。オレの部屋ね、とニノくんが部屋を出て行くから私もついて行く。

「ここ」
「黄色部屋」
「そ。入る前にはノックお願いね。何かシてるかもしんないから」

テヘヘと笑って見せる。
会話の中に明るい下ネタを組み込む辺りも、ただ者では無いな...危険。

「ついでに声かけとこっか」
「誰に？」
「大野さーん」
「え！誰か居たんですか！？」

てっきり今在宅してるのはニノくんだけなんだと思ってたから、また急に緊張する。

「起きてるー？仕事中ー？」

ニノくんが、青いドアをドンドンと叩いた。

「...おはよぉ...」

中から眠たそうな声。

「新入りさん、来たよー」
「...分かったぁ...」

ホントに分かってんのかよ、って笑いながらニノくんがもう一度トンっとドアを叩いたと同時に

外からバイクの音が聴こえて来た。

「あ、帰って来た」
「え？」
「孫」
「...あ、お坊さん」
「そうそう、無駄に良い声の坊さん」

パタパタと階段を降りて行くニノくんを追い掛けるように、私も一階へ降りると

玄関に立っていた袈裟姿の男性が、私を見て微笑んだ。