PARACAGE【ars】 (ページ26)

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26.裏側。ページ26

「小さいのに存在感あるって所が苦手で...」

存在感...って、ニノくんがクスクス。
その隣で、潤くんが私を見上げる。

「帰宅時間の目安は？」
「えっと...19時までには帰って来られると思います」
「了解」

潤くんがまた、雑誌に目を戻した。

「あ、智くんと翔さんは...？」
「大野さんは多分まだ寝てる。翔ちゃんは、もうとっくに寺でしょ」
「あ！そうか！」

ニノくんの言葉に、翔さんがお坊さんだった事を思い出す。

「じゃあ、行ってきます」

ペコッと頭を下げ、「行ってらー」「はいはい」とゆー2人の声を聞いて家を出た。

良い天気。
門扉には、昨日と同じように『テラスハウス』のプレート。
それを昨日とは全然違う気持ちで見る。

私は駅に向かう前に、家の裏側に回ってみた。
そこには立派な門構えがあって、開け放たれたその向こう側にお寺が見える。

「あ、翔さん」

そのお寺の前を箒で掃除してる、作務衣姿の翔さん。

「おはようございまーす！」と私が声を掛けたら、彼は顔を上げてこっちを見た。

「あぁ！おはようございます！」

箒を持ったまま、私の方へ歩いて来る。

「Aさん、今からお仕事ですか？」
「はい」

袈裟も似合ってたけど作務衣も似合うなぁ…。
そんなに和風のお顔立ちって訳ではないのに。

そんな翔さんの背後には、蕾をつけた桜の樹が何本も。
私の視線がそれを見てる事にきづいたらしく、翔さんが「満開になると圧巻ですよ」とまだ蕾の桜を見上げる。

「うちは『桜香寺』ですからね。桜に守って貰ってるんだと、子供の頃から教えられました」

そう言えばテラハウスのお庭にも桜があった。

「では、お仕事頑張って来て下さい！」
「はい！翔さんも」
「アハッ、ありがとうございます」

翔さんがペコリと頭を下げるもんだから、私も一緒に頭を下げる。

「行ってきますね」
「はい、行ってらっしゃい」

何だか箒も似合ってる翔さんに見送られて、改めて駅へと歩き出した。

お店までの通勤時間は、前に住んでた家からと変わらなかった。
ただ、最寄り駅に各駅停車しか来ないからその時間には気を付けないと。

でも各駅停車だからなのか、これまでは座れなかった通勤電車で座れて。
新生活、凄く良いスタートを切った！と思った直後に、待て待て待て、自宅がえらいこっちゃな感じじゃないか...と思い出す。

絶対に慣れる日は来ないわ...と思いながら、職場のタイムカードを押す。