PARACAGE【ars】 (ページ14)

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14.写真立ての中。ページ14

私は吸い寄せられるように、平積みされてるその雑誌を手にした。
ポスターと同じ写真が表紙に使われてる。

男性ファッション誌なんて、必要無いはずなのに。
寄り道をしてしまって急いで仕事へ向かった私は、買ったその雑誌を胸に抱き締めるようにしてたんだ。

休憩時間に雑誌を開く瞬間は、酷くドキドキしたのを覚えてる。
表紙の彼はその雑誌の専属モデルらしく、色んな彼が紙面を飾っていた。

真顔だったり、笑顔だったり。
スーツだったり、カジュアルだったり。
ページを捲る度に、ドキドキしてワクワクして。

すぐに彼がいつから専属モデルなのか調べ、その頃からのバックナンバーを買える限りネットで注文した。

私は今までずっと、彼を探してたんじゃないか？と思った。
ずっと、彼を探してたんだ！と思った。

だけど彼にはあまり情報が無くて、分かるのは『咲』って名前と29歳って事だけ。
それでも専属の雑誌『MEN'S STORM』を毎月買うだけで、私は満足だった。
オシャレで格好良い咲くんの姿が毎月いっぱい見れる。
それが本当に嬉しくて楽しい。

まだチェストも何も無くて飾れる場所が無いから、写真立てはもう一度キャリーの中へ。
入れてる写真はあの日初めて見た、あのポスターの、あの咲くん。
色んな咲くんを見たけどやっぱりこの表情が一番好きで、あの表紙をスマホで撮ってわざわざL版写真サイズに現像した。

「ただいまーっ！今日から新しい子、来てるよね！」

咲くんに見惚れてなかなかキャリーを閉められないでいると、下からまた初めての声がした。

「...オトコだった...」

最後の一人もオトコだった事に愕然としながらも、挨拶しなきゃ！と部屋を出る。

階段を降りてると、お風呂上りの潤くんとリビングの入口でバッタリ。

「おぉ。お先に風呂いただいた」
「あ、はい」

ホカホカしてる潤くん、ちょっとさっきより雰囲気柔らかい。

「うるさいの帰って来てるわ」
「うるさいの...」

...あ！ニノくんがバカバカ言ってた人！？
絶対そうだよ、だって潤くんはどう見てもバカじゃないし、テラハウスをテラスハウスにする人には見えない。

「新入りさん、女の子なんでしょ！？」

中から聴こえた声に潤くんが「うるせぇよ」って言いながらリビングに入るから、私もついて入った。

「あ！新入りさん？初めまして！」
「...え...？」

夢を、見ているんだと思った。

だって、さっきまで写真の中に居た人が

目の前に、居る。