桃色の指先と翡翠の憂鬱 37

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阿｢なるほどね｣

川｢斗真は次、阿部先生には優しく接します。何かをプレゼントしたり、秘密を話したり、距離を縮めてくるはずです｣

阿｢警戒しとくね｣

川｢ニューヨークにいる間、深澤さんの家に行ってくれますか？｣

阿｢それは問題ないけど、なんでふっかなの？｣

川｢深澤さんは、人の悪意に敏感なんです｣

阿｢そうかもね｣

川｢彼の心を岩本さんが守ってますから｣

阿｢如恵留｣

川｢はい｣

阿｢如恵留は斗真さんのこと好きなの？嫌いなの？｣

川｢難しい問いですね｣

阿｢経営者としては評価出来るのはわかる。仕事出来そうだもん｣

川｢阿部先生、僕が微妙な立場にいることはわかってください｣

阿｢ごめん｣

川｢佐久間、真田さん、ラウの生活を抱えているんです。今後はビルの経営もあります。好きだけで、突っ走れる佐久間とは違うんです…｣

阿｢うん｣

川｢でも、阿部先生を守ることだけは約束します｣

阿｢ありがとう｣

川島先生が先に洗ってお風呂から出た。


全てを捨ててでも、俺を選ぶとは言わないんだな。

俺は川島先生と佐久間のためなら全てを捨てられるけど。

佐久間も同じだろうな。


川島先生は俺と佐久間、さらに多くのことを抱えてるんだ。

愛してるだけでは、進めない領域に川島先生はもう入ってる。

川島先生に支えられてきた俺が、川島先生を支える番だ。


お風呂上がりの牛乳を貰うと、玄関のドアが開いた音がする。

川｢佐久間おかえり｣

阿｢佐久間？お泊まりじゃないの？｣

佐｢ただいま｣

川｢帰って来ると思ってたよ｣

阿｢なんで？｣

佐｢にゃは。あべちゃんとのえちゃんに会いたくなった｣

川｢さなぴーはお泊まり？｣

佐｢うん。ふっかとゲームやってた｣

阿｢ひーくんに送ってもらったんだね｣

佐｢にゃす｣

川｢佐久間、大丈夫だよ｣

佐｢そう？あべちゃん元気ないよ｣

阿｢そう見える？｣

佐｢うん。あべちゃん、お風呂入ってくるから待ってて｣

川｢阿部先生、流しました？｣

阿｢あ、流してる｣

佐｢また入れるから大丈夫｣


佐久間が川島先生のお風呂場に走って行った。

俺が元気ないってなんで佐久間はわかるんだろ。

川｢阿部先生｣

阿｢なに？｣

川｢ごめんなさい｣

阿｢いいよ。如恵留、半分持つって言ったでしょ？如恵留の大変さはわかるからね｣

川｢はい｣


川島先生をそっと抱き締めて、背中を撫でた。

いつも抱き締めてもらうのは俺だけど、これからは俺が川島先生を抱き締めるよ。

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