桃色の指先と翡翠の憂鬱 37

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川｢阿部先生、話があります｣

阿｢わかった。この紙袋、中身なに？｣

川｢こっちは契約書ですよ｣

紙袋から川島先生が大きなファイルを3冊出した。広辞苑みたいな厚さがある。

阿｢すごいね｣

川｢憲法・連邦法・各州法上の契約書を書く必要があるので、アメリカの契約書は日本の3倍になってしまうんです｣

阿｢これは休職しないと出来ないや｣

川｢裁判の多い国なので、決めることも細かいんです｣

阿｢こっちは？｣

川｢佐久間が僕にプレゼントしてくれたコップと同じものです｣

阿｢あの青くて綺麗なグラスだね｣

川｢竣工式のパーティーで使います｣

阿｢そっか、パーティーしないとなんだ｣

川｢使った後は、カフェで使います｣

阿｢こんな高価なコップ使うの？｣

川｢食器を妥協しないと宮舘さんと決めてますから｣

阿｢如恵留、話って何？｣

川｢お風呂でシャンパンはどうですか？｣

阿｢良いけど、明日は魔法の国だよ｣

川｢1杯だけです｣

阿｢うん｣


お風呂に入ってシャンパンを飲んだ。

川｢阿部先生、あの契約書に目を通してサインをしたら僕がニューヨークに持って行きます｣

阿｢うん｣

川｢僕がいない時に、斗真と会わないでくださいね｣

阿｢大丈夫だよ｣

川｢斗真は、僕を後継者にしたいんです｣

阿｢俺が邪魔だってことでしょ｣

川｢まぁ、そういう事ですね｣

阿｢雰囲気でわかるよ｣

川｢阿部先生、僕がニューヨークに行ってる間、深澤さんの家に行きませんか？｣

阿｢なんで？｣

川｢佐久間と真田さんは、この家に斗真を入れますよ｣

阿｢話せば、2人ならわかってくれるよ｣

川｢阿部先生、佐久間は猫が見たいと言われたら喜んで入れますし、真田さんはロンドンについて来てもらう負い目があります｣

阿｢そうだね、佐久間、動物絡むと見境ないからな｣

川｢学校では、僕が守衛さんに頼んでおきますから｣

阿｢そんな警戒しないとだめなの？｣

川｢斗真はアメリカの大学を上位の成績で卒業して、父に気に入られてるんです。頭の切れる男です｣

阿｢頭良いのはわかるけど…｣

川｢けど？｣

阿｢如恵留ほどじゃないよね｣

川｢なぜですか？｣

阿｢俺なら最初から敵意は向けないな｣

川｢それも作戦の内なんですよ｣

阿｢確かに、ニューヨーク行ったメンバーは仲良くなってるもんね｣


第一印象が悪いと、その後その人の良い部分が見えると普段より良く見えてしまう。

マイナスからの出発は、プラスになった時のギャップが大きい。

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