桃色の指先と翡翠の憂鬱 30

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川｢お待たせ｣

川島先生が入って来て、人形の家の前に正座した。

佐｢のえちゃん、どう？｣

川｢可愛いね｣

川島先生は目を細めて、愛おしそうに見てる。

阿｢佐久間、この家に似てる家具を選んだよ｣

佐｢のえちゃんの家、大好き｣

川｢佐久間ありがとう｣

阿｢如恵留、このほしぞらねこはね、至るところに星がモチーフになってるんだよ｣

佐｢このねずみさんは耳がハートでね、可愛いでしょ｣

川｢2人ともすっかりこの人形の魅力に取りつかれたね｣

阿｢うん。ひーくんが好きなのがわかった｣

佐｢のえちゃんも好きになって｣

川｢他にはどんなのがあるのかな。佐久間カタログを持って来て｣

佐｢いいよ｣

佐久間がクローゼットのリュックからカタログを持って来た。

佐｢これね。今度ひーくんに会ったら返すよ｣

川島先生はカタログを捲って、1つずつ目を近づけて見てる。



阿｢如恵留、今度1日時間作ってくれない？｣

川｢阿部先生なんですか？｣

佐｢俺が最初にプロポーズされた教会に3人で行きたい｣

阿｢あの時、母親のこともあってちゃんと見てないし、如恵留と佐久間と3人でゆっくり見たいな｣

川｢佐久間、阿部先生…｣

川島先生の瞳が潤んで涙が零れた。

川｢2人の大事な思い出の場所に、僕が行ってもいいんですか？｣

川島先生の声が震えてる。

佐｢大事な場所だからこそだよ｣

阿｢うん。3人の大事な場所にしよう｣

川｢はい…｣

佐久間が川島先生を抱きしめて、俺が後ろから川島先生を抱きしめた。

阿｢如恵留。遠慮しないで｣

佐｢あべちゃんは俺とのえちゃんにあれやってね｣

阿｢うん。考えとくね｣

佐｢俺とあべちゃんはのえちゃんがいないと、だめなんだからね｣

川｢佐久間、阿部先生ありがとう…｣


川島先生は泣き止まくて、佐久間の髪の毛を濡らした。

佐｢もうのえちゃん、お風呂入ったのに…｣

阿｢如恵留、くすぐりの刑だ｣

抱きしめた手を川島先生の脇に入れてくすぐる。

川｢阿部先生、やめてっ｣

川島先生はくすぐりに弱い。

佐久間が抱きしめてるから逃げられず、川島先生は嫌がりながら涙が止まった。

佐｢のえちゃん、予定開けてね｣

川｢うん。張り切って開けちゃうね｣


川島先生は笑顔になったけど、また少し目尻が光った。

泣き虫の称号、また川島先生に渡さないとかな。

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