桃色の指先と翡翠の憂鬱 26

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家に着くと、佐久間の様子がおかしい。

阿｢佐久間？｣

佐｢あべちゃんむり…｣

川島先生が佐久間のおでこを触った。

川｢佐久間、熱が出ちゃったね｣

佐久間を抱き上げて川島先生がベッドに寝かせた。

佐｢いくらさん…｣

川｢痛み止め出てるから飲んだら下がるよ｣

佐｢うん…｣

阿｢佐久間、荷物片付けたら添い寝するから待ってて｣

佐｢やだ。あべちゃんここにいて｣

川｢阿部先生、僕が片付けるからいてあげて｣

阿｢如恵留、ごめんね｣

佐｢のえちゃんもいてよ｣

川｢佐久間、猫のご飯とかやることあるから待って｣

阿｢佐久間、少し休みな｣

佐｢あべちゃん離れないで｣

阿｢一緒に寝るから大丈夫｣



川島先生が出て行って、俺は佐久間の右側に横たわった。

佐｢あべちゃん｣

阿｢ん？｣

佐｢このことこーじに言わないで｣

阿｢うん。ふっかとひーくんにも口止めしとくね｣

佐｢必ず撮影日までに治すから｣

佐久間は川島先生が持ってきた薬を水で飲んだ。

川｢佐久間、大丈夫だよ。舟状骨をスクリューで止めてるし、切ったのは1cmにも満たないって｣

佐｢うん｣

阿｢傷跡は残る？｣

川｢数年したらわからなくなると思います｣

佐｢あべちゃん、のえちゃん心配かけてごめん｣

川｢佐久間、僕は怪我する予感がしてた。最近、アクロバットが絶好調だったでしょ？｣

佐｢うん。体が軽くてなんでも出来そうだった｣

川｢そういう時は怪我しやすいんだよね。言うと佐久間が縮こまってしまうから言えなかった｣

阿｢佐久間、利き手でも足でもないし不幸中の幸いだね｣

佐｢うん、かっこよくなったし｣

川｢手首にスクリュー入ってるってかっこいいね｣

阿｢佐久間の左手はサイボーグ化したね｣

佐｢うん。みんなに自慢する｣

川｢佐久間、お寿司が届くまで少し眠って｣

佐｢のえちゃん、後できてね｣

阿｢佐久間一緒に寝よ｣

佐｢あべちゃん、手を繋いでて｣


川島先生が出て行って、佐久間が目を閉じたのを確認する。

怪我しても、かっこよくなったか。

ポジティブな佐久間らしいな。


目を閉じて休むと川島先生からスマホにメッセージが届いた。


"バク転できるまで3ヶ月はかかります"

'それは佐久間に言えないね'

"撮影日だけ片手でバク転を許可します"

'了解'

3ヶ月、両手でアクロが出来ないと聞いたら、ポジティブな佐久間でも落ち込んでしまう。

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