桃色の指先と翡翠の憂鬱 21

・ ページ9

川島先生のお父さんは佐久間の椅子に座ると、この椅子は佐久間くんのかな…と呟いた。

川｢あとで消毒します｣

阿｢お父さん、コーヒー飲みますか？｣

川父｢すぐに帰るから。阿部先生ありがとう｣


川島先生のお父さん、高そうなスーツ着てるけど、雰囲気は柔らかくてにこにこしてる。怖さは1ミリもない。


川｢僕はニューヨークに行きません｣

川父｢如恵留…まぁ、良いから。阿部先生も聞いてください｣

阿｢はい｣

川父｢まず先に。阿部先生、如恵留を変えていただき感謝します｣

阿｢川島先生は僕の影響ではないです｣

川父｢一緒に住んでくれて、如恵留に笑顔が増えたと聞いてます｣

川｢世間話はいらないです｣

阿｢川島先生、トゲトゲしないの｣


川島先生のお父さんが大きく息を吸い込んだ。

川父｢如恵留、1人にしてすまなかった…｣

川島先生のお父さんが頭を下げた。

川島先生の能面のように固まった表情がわずかに動いた…。


川父｢あの時は…お前が怖くて…。お前よりお母さんを優先して申し訳ないと思ってる…｣

川｢あの人の話は聞きたくないです｣

川父｢如恵留、いつか俺の会社を継いで欲しい。そのために、株をお前に渡してあるんだよ｣

川｢お断りします｣

川｢それだけではないですよね？｣

川父｢佐久間くん、大学卒業したらニューヨークに留学させないか？｣

川｢…｣

阿｢ダンス留学ですか？｣

川父｢阿部先生、その通りです｣

川｢その交換条件に僕を呼ぶんですね｣

川父｢お母さんと、そふぃあとは別に暮らしているんだ…｣

阿｢…｣

川島先生のお父さんは別居中なんだ。

川｢それがなんですか？｣

川島先生の声が少し震えた。

川父｢1人になる辛さが俺にもわかったよ｣

川｢…｣

川父｢1年間、ニューヨーク留学に関する費用は、全て持つ。その間、如恵留に会社経営を教えたい｣

阿｢…｣

1年間、佐久間が留学する時に川島先生が一緒ならそれは心強い。

川｢…｣

佐久間がニューヨークに留学することは、佐久間にとっても大きな経験になる。

川島先生が断れないところを選んでる。

川島先生のお父さん、遊泳術はさすがだ。


川父｢如恵留、学校は休職すればいい。阿部先生も一緒に勉強して、如恵留を支えてくれてもいい。佐久間くんが卒業するまでに、考えて欲しい｣

川父｢良い返事待ってるから｣


川島先生のお父さんは立ち上がると、一礼して準備室を出て行った。

・→←【突然の訪問者編】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す