桃色の指先と翡翠の憂鬱 21

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川島先生が2人に頭を下げてる。

佐｢あべちゃん、俺は？｣

阿｢佐久間はここにいて｣

佐｢うん…｣

阿｢帰ろっか｣

佐｢あべちゃん？｣

阿｢大丈夫だから、少し泣かせてよ…｣

川島先生ならすぐに追いかけてくれる。

佐久間と手を繋いで、車を停めたコインパーキングまで歩く。

歩く度に涙が落ちた。

やっと、お母さんと向き合えたし、弟にも話せた。

お父さんに隠す悲しみより、安堵感が強い…。

これで、俺は来年度、入学してくれる生徒とちゃんと向き合える。

1人の人間として俺は生徒に教える立場を選んだ。



川島先生が走って追いかけてくれた。

川｢阿部先生、帰りましょうか｣

佐｢わらび餅ちゃん神社はまた今度ね｣

阿｢2人ともありがとね｣


助手席で、泣きながら俺は教師の立場を捨てられないし、捨てたくないと強く思った。

ニューヨークで教師を続けることが難しいことは、ネットで調べて知っている。

俺は1人残る選択肢を、ずっとこの先も悩んでいくはずだ。

たった1年間離れて壊れる関係ではない。

でも、2人と離れる未来は考えたくない。



自宅について、俺はベッドに入った。

川島先生が佐久間に1人にしてあげてと話してる声が聞こえる。

ごめんね。少しだけ、時間を俺にください…。


お昼ご飯はいいや。

目を閉じて、3人でニューヨークで生活している未来と、1人残る未来を考える。


久しぶりに思考の海にダイブする。

3人でニューヨークに行く。俺はニューヨークで川島先生と共に経営を学ぶはず。

ニューヨークで大学院に行く手もあるが、そうなると2年間行かなくてはいけないし、試験勉強を始めないといけない。

ダンス留学する佐久間と、跡取りの川島先生のおまけでついて行くようなもんだし、難しいな。



日本に1人残る、こっちの方が現実的だ。

俺は好きな教師の仕事を続けられるけど、簡単に会えなくなる…。

猫も俺がここにいた方が、2匹のためにはなる。

1年間、1人と猫2匹、金魚1匹の生活のほうが、良いような気がする。

2人を説得するのが難問だな…。


佐久間とも川島先生とも離れたくない。

佐久間も川島先生もニューヨークに行くことは、決まっている。

佐久間は川島先生以上にニューヨークで学ぶべきだ。


未来がどうなるかなんて、予想はできないけど…離れる結論は避けたいな。

ずっと1人でループをしているな。

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