桃色の指先と翡翠の憂鬱 53

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川｢夏って感じですね｣

阿｢外で食べるから涼しくしてみた｣

川｢3匹完食しましたので、カレーを作りましょう｣

阿｢うん。何カレーにする？｣

川｢冷凍のシーフードを使ってトマトカレーはどうですか？｣

阿｢さっぱり？｣

川｢はい。夏なのでさっぱりがよろしいかと｣

阿｢了解。俺は炒め係ね｣

川島先生が玉ねぎを切って、鍋で俺が炒める。

川｢にんにくなしで良いですか？｣

阿｢うん｣

玉ねぎを炒めたら冷凍のままシーフードミックスを入れてトマト缶とざく切りしたトマト両方を入れて煮込んだ。

川｢20分くらいですかね｣

阿｢その間にバルコニーセットしてくるね｣

川｢僕はお風呂の用意をしてきます｣

阿｢よろしく｣




猫が窓際にいないか確認してから、バルコニーに出てテーブルと椅子をセッティングした。

薄い雲が漂って、月がぼんやりと光ってる。

星は見えにくいけど、月の優しい光は疲れた川島先生に寄り添ってくれそうだ。

中に入るとカレーの匂いが漂ってきた。



阿｢如恵留｣

川｢はい｣

阿｢ご飯炊き忘れたね｣

川｢フランスパン焼きますよ｣

阿｢トマトだから合う？｣

川｢ワインにも合います｣

阿｢わざと？｣

川｢どうでしょうか｣

いたずらっぽく微笑んだ川島先生でわざとだと悟った。


バルコニーにセットしたテーブルに、カレーとフランスパン、アイスペールに入れた白ワイン。

向かい合って座って小さく乾杯をした。


阿｢うまい｣

川｢特級のシャブリです｣

阿｢いただきます｣

カレーにフランスパンをちぎって付けて食べた。

阿｢うわっ。さっぱりだね｣

川｢夏でもさらっと食べられますね｣

阿｢うん。こてこてのカレーも好きだけど、これも美味い｣

川｢疲れて食欲落ちてたんですが、阿部先生と食べると美味しいです｣

阿｢稽古大変だよね｣

川｢どんなにきつくても佐久間が楽しいって笑い飛ばしてくれるので、僕も楽しいです｣

阿｢あいつ、きつい事が楽しいとか思ってそう｣

川｢佐久間は自分を追い込んで、限界の先を見たいんだそうです｣

阿｢限界の先か｣

川｢岩本さんに似てます｣

阿｢あそこが仲良しなのはそれもあるね｣

川｢2人ともストイックですね｣


佐久間もひーくんも、自分の力を信じてる。

きついとか辛いとか言うことすらなく。

いつも涼しい顔をしているけど、努力をこつこつと積み上げる努力家でもあるんだ。

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