桃色の指先と翡翠の憂鬱 53

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川島先生の車の助手席に座って、座席を倒して横向きになった。

佐久間とのこと、いつかバレるかもしれないってずっと怯え続けてた。

教務主任に聞かれた時は、血の気がひいて世界が止まったように、音が聞こえなくなった…。




佐久間が公表したいなら、教師を辞めるって、啖呵切ったのに。

いざ、教師と生徒の恋愛の噂を聞くだけで、こんなにも狼狽えてしまう。

いっそのこと、自分から話して教師を辞めて院に進もうか…。




川島先生が運転席に乗ってきて、静かに車を出した。


川｢阿部先生、バカなことは考えていませんよね？｣

阿｢…｣

川｢佐久間とのことは、話してはいけません｣

阿｢…｣

川｢阿部先生と僕だけ処分されるとは思います｣

阿｢佐久間はお咎めなしだよね｣

川｢そうなるでしょうね。でも、彼の経歴に傷が付きます｣

阿｢傷？｣

川｢はい。大学への推薦も、僕と阿部先生が贔屓をしたと｣

阿｢佐久間の実力でしょ？如恵留も推薦文書いたけどさ｣

川｢そうは思われないのが現実ですよ｣

阿｢わかった。佐久間のためなら黙ってる…｣

川｢そうしてください。佐久間のためですから｣

阿｢うん｣

川｢絶対に隠し通します｣

阿｢そうだね｣

川｢佐久間の仕事、年内決まってまして。来年度のオファーもあります。もう僕たちの生徒でもないし、ラウと共に事務所の看板です｣

阿｢忙しい？｣

川｢ニューヨークでまたオファーがあって、それを受けたら忙しくなります｣

阿｢佐久間は行くって？｣

川｢まだ話してないです…｣

阿｢なんで？如恵留も寂しいから？｣

川｢はい。佐久間がいないとうちの雰囲気暗いですし｣

阿｢佐久間、行きそうだもんね｣

川｢受けると思います。なので、まだ僕の心の整理がつくまで話さないでください｣

阿｢いいよ。断って欲しいけど、さなぴー次第かもね｣

川｢さなぴーにべったりが戻りましたね｣

阿｢そうそう。アニメのイベントさなぴーも行くみたいだし｣

川｢僕は佐久間の拠点は日本にしたいんです｣

阿｢如恵留1人で渡米するの？｣

川｢しばらくは、ニューヨークと日本を行き来することになりそうです｣

阿｢そっか。如恵留いないと寂しいけど｣

川｢ありがとう。僕も出来る限り日本にいます｣

阿｢そうして｣



ニューヨークと日本を行き来するか。

やっぱり教師を辞めるって決めたんだな。

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