桃色の指先と翡翠の憂鬱 48

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佐｢ごめん。行くって決めたのは俺で、3ヶ月後には一時帰国するつもりなのに、寂しい…｣

川｢寂しくないって言われたら僕が寂しいよ…｣

阿｢佐久間、抱っこしてあげる｣

佐｢…うん｣

俺の上に座った佐久間は、俺の背中に手を回すと声をあげて泣いた。

落ち着くまで背中をとんとんする。

甘えるのは川島先生って佐久間が決めてから、しばらく抱っこもしてなかった。



佐｢あべちゃんとのえちゃんと離れたくない…｣

阿｢うん｣

佐｢のえちゃんのご飯食べれなくなるの嫌だ…｣

川｢嬉しいこと言ってくれるね…｣

佐｢帰って猫さんがいないのつらい…｣

阿｢猫も寂しいよ｣

佐｢わらび餅ちゃん、俺がいなくて寂しくて死んじゃうかも…｣

川｢それはないかな…｣

佐｢狗尾草ちゃんだって、俺の匂い覚えてくれたのに…｣

阿｢佐久間とは認識してないかもよ？｣

佐｢あべちゃん、のえちゃん、ちょっと意地悪…｣

川｢ごめん。僕も寂しくて｣




阿｢佐久間｣

佐｢うん？｣

阿｢王子様は、渡り鳥と一緒に自分の星を出たんだ｣

佐｢あべちゃんの好きな話ね｣

阿｢そう。6つの星を回って、地球に降り立った｣

佐｢…うん｣

阿｢6つの星にいる人は、人間の悪いところを誇張してはいるけど、その通りで｣

佐｢うん｣

阿｢地球の人も同じだって。目の前のことに夢中になりすぎて、大切なことが見えてない｣

佐｢それで？｣

阿｢王子さまは自分の星がどれだけ素晴らしいか気付くんだ。窮屈に思えた自分の星に帰りたくなったけど、もう戻ることは出来なくて｣

佐｢…うん｣

阿｢離れて、やっと大切なものに気付けたんじゃないかな｣

佐｢…｣

阿｢ごめん。取り留めのない話で…｣

俺の手を川島先生が触って微笑んでくれた。




川｢王子さまと違ってね、佐久間は大切なものを増やす旅に出るんだよ｣

佐｢俺の大切なものはあべちゃんとのえちゃんだよ？｣

川｢違うよね？佐久間はたくさんの人に愛されて、大切にされてる｣

佐｢…うん｣

川｢僕と阿部先生から離れて、王子さまみたいに、きつねに出会ったり、自分の価値観と違う人とぶつかったり。それこそ、6つの星みたいな人と出会って、佐久間の感性を磨いて欲しいな｣

佐｢わかった｣


俺の話を川島先生がまとめてくれた。



佐久間がニコッと笑って俺の頬を両手で包んだ。

さも大切なものはこれだよって、伝えてくれてるみたいに。

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