桃色の指先と翡翠の憂鬱 48

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教室の準備が終わって、お昼ご飯を準備室で2人で食べる。



本｢阿部先生、本当に聞かないんですね｣

阿｢なんのこと？｣

本｢さっきの話です｣

阿｢あぁ…俺もしっかりとこうだってわかってないんだよね。Qのほうだし｣

続く言葉を飲み込んだ。

3人で結婚をポリアモリーと言うらしいけど、これは隠さないといけない。

多様性が認められるようになって、3人婚も増えてきている。



本｢俺もしっくりくるものがないんです｣

阿｢そうなんだ…｣

本｢川島先生と話したら、答えが見つかるかも。この学校なら俺も隠さなくて良いかもって｣

阿｢うん｣

本｢阿部先生は今まで嫌なことってありました？｣

阿｢特には…人目を気にするのはもう慣れたし、もしこの学校で嫌な思いをしたら改善するから教えてね｣

本｢はい｣


本高先生も悩んでるんだ。

嫌な思いをしたことがあるって、言ってるような。

でも、俺より川島先生のほうが相談相手には良い。

2人は仲良くなれそうだし、俺の始まりが佐久間だって、うっかり口に出しちゃうから。


阿｢川島先生、どこか寄って午後から来るって言ってたから、そろそろかな｣

新しく豆をセットしてコーヒーを淹れた。




川｢お邪魔します｣

阿｢お。噂をすればだね｣

本｢こんにちは｣

準備室に入って来た川島先生もスーツが変わってる。



阿｢コーヒー淹れたよ。飲むでしょ？｣

川｢いただきます｣

阿｢午前中どこ行ってたの？｣

川｢近隣の商店街と警察署にご挨拶を｣

本｢それ生活指導の仕事ですか？｣

川｢はい｣

阿｢そっか。何かあった時、学校に連絡が来るように？｣

川｢それもありますけど。生活指導は地域と関係機関との連携が大事です｣

阿｢そういや、去年も生活指導主任は行ってたね｣

本｢先生の仕事って幅広い｣

川｢生徒のためなら、何だってしますよ｣

阿｢そうだ。本高先生、川島先生と話したいことあるよね？｣

本｢…｣

川｢レシピの話とかですか？｣

阿｢俺は、職員室戻るね｣

本｢はい｣


準備室を出て、そのまま体育館に向かった。

紅白幕に、壇上の盛大なお花。椅子が綺麗に並べられている。

明日からまた新しい生徒が入ってくる。

出会いと別れ。



誰もいないのに、昔のことなのに、ここで俺に一目惚れをした佐久間の姿を探してしまう。




明日、佐久間が旅立つ。

新年度、また新しい1年の始まりとともに。




【新年度と後輩編】




fin.

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