38滴目 ページ39
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『いやあのっ、これは違くてですね』
「もう、好きって言ったり好きな人はいないって言ったりでどれがほんとか分かんないなぁ」
『あれはきんときくんにあいつのことほんとは好きじゃないよって伝えるためだよ!』
「やっぱりね。……もうちょっと早く行動すべきだったなぁ」
彼は少し険しそうな顔をすると何かを呟いた。
やっぱりってことは、あの言葉の意味ちゃんと伝わったのかな。それならいいんだけど……
もし誤解して伝わってたら突然きんときくんのこと拒否したみたいになっちゃって嫌だったけど、あの時の私は余裕がなかったからああするしかなかったのだ。
「まあ、それはいいとして……今言った好きっていうのは?」
『へっ!?いやだから、それは、』
いや、こんな状況で告白なんてできないけど、でもこれはそういう流れなの……!?
どうしたらいいか分からなくてもごもごしていると、彼はあははっと笑って私の手を握ってきた。
「ごめん、反応がかわいかったからいじわるしちゃった」
いつもの爽やかな笑顔に少しだけいたずらっ子みたいな表情をプラスさせた彼はそのまま私をの手を引き歩き出した。
正直、私がきんときくんのこと好きになったら迷惑かな?とちょっとだけ不安が過ぎってしまう。
私って後ろめたいことの多すぎる人間だし……全部きんときくんにはバレてるけど。
そんな不安からか私は無意識に彼の手にぎゅっと力を込めていた。
「……いまここで俺が変に返事しちゃったら弱みにつけ込んでるみたいで嫌だから、正式な返事はまた今度、ね?」
『それ、って』
もう返事してるようなもんじゃん……!
私は顔が赤くなるのを感じたが、きんときくんは相変わらず楽しそうに笑っていた。
私がきんときくんのことを振り回してると思ってたけど、もしかしたら振り回されてたのは私のほうだったのかな、なんて。
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作者名:ふわぴ | 作者ホームページ:http://urana
作成日時:2021年1月30日 17時