27滴目 ページ28
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「おはよう、Aさん」
『ぁ、おは、よ……』
次の日。
俺はまだ昨日の彼女の行動が頭に残っていたけれど、それでも彼女には普通に接するのが1番だと考えいつも通り挨拶をした。
……やっぱり、避けられてる。顔も合わせてくれない。
それにしても、なんでいきなりこうなってしまったんだろうか。
「お、Aちゃーん!おはよ!」
『へっ、お、おはようございます……』
「……誰?」
確か、こいつは他のクラスの……なんで、こいつがここに?しかも、Aさんに馴れ馴れしい。
なんだか、胸がまたもやもやしてきた。
「もー、ちょっと堅苦しくない?俺たち恋人なんだからさぁ!」
「は?恋人って……」
俺はAさんの方を見た。彼女は笑顔で対応をしているけれど、その顔はどこかで見たことのある顔だった。これは、この顔は……
「あぁ、ごめんねきんときくん?昨日告ったらOKもらえちゃったんだよね〜!」
「……そう。別に謝る必要はないんじゃない?」
昨日告白したからって、でも、Aさんは好きな人なんていないって……
どういうことだ?俺の頭の中は一気に混乱し始めた。
「え、そお?まあいいや。ねっAちゃん、今日の放課後カラオケ行かね?」
『あ、ごめん、もうすぐテスト近いからあんまり遊べないの』
「なんで?ここにいるきんときくんとは散々遊び回ってなかった?」
いきなり話に持ち出され驚くと、彼女もその話題が上がるとは思っていなかったのか、ひどく驚いた顔をしていた。
コイツ、Aさんのことどこまで知ってるんだ?
『いや、それは……』
「俺がAさんに頼んで勉強教えてもらってただけだよ」
「ふーん……ま、いいや。じゃ今日放課後空けといてね〜!」
Aさんの話も聞かずにそいつは教室を去っていった。
彼女の方を見ると微かに手は震え、顔は強ばっていた。
「Aさん、だいじょ、」
『大丈夫だから!……大丈夫、だから』
彼女はまるで自分に言い聞かせるかの様にそう言った。
俺はそれ以上声をかけることができなくて、そのまま自分の席に座り、教科書の準備をし始めた。
胸がちくちくと痛んで苦しい。
次の授業は集中できそうにないなぁ。
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作者名:ふわぴ | 作者ホームページ:http://urana
作成日時:2021年1月30日 17時