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「これしかなかったんだけど。食べれるか？」
『なにこれ』
「稲荷寿司だよ。猫なら寿司なんて食ったことないかもしれないけど、案外美味いぞ」
目の前に差し出された薄茶色のなにか。それがなんなのかは分からなかったけど、もうなんでもいいから食べたかった私はひとつ手に取ってぱくっとかぶりついた。
もぐもぐと咀嚼すると今まで食べた事のないような味が口の中に広がった。
表面の皮は甘くて、中はつぶつぶしてるけどカリカリと違って柔らかくて……美味しい。
気づけば私はお皿の上いっぱいにあったすし？を全て平らげてしまっていた。
「随分と腹が減ってたんだな」
『うん。もう何日間も食べてなかったの』
「そうか。大方人間に捨てられて、その恨みで化け猫にでもなってしまったんだろうな」
『その化け猫ってなぁに？』
「自分の手を見てみろ。なにか変わってることはないか？」
そう言われて私は自分の手を見つめる。
手なんて別に何も変わって……
あれ？これって。
『これ私の手じゃない！』
「お前の手だよ。人間に化けてるから奴らと同じ形をしてるだけだ」
『人間に化けてる？』
「……まあ、説明するといろいろ長くなるけど」
要するに飼い猫だった私はあの女の子に捨てられて、そのせいで辛い思いをしたという恨みが増幅してただの猫から化け猫になってしまったのだと。
私が手をぐーぱーさせている間に、隣に座った男の人はそう説明してくれた。
うーん、指細いなぁ私。こんなんじゃ狩りもできないよ。
『んー？でも私あの子のこと嫌いじゃないよ』
「口ではそう言っていても自分では気づかないところで恨んでることもあるさ」
『そうかなぁ……よく分かんないや』
確かにどうして私を捨てたんだろうって、そんな疑問はあるけど別にあの子を憎んだりなんてしてないのに。
不思議だなぁなんて思いながらも、私は隣にあるもふもふのしっぽへと目をやった。
『あなたも捨てられたの？』
「は？」
『だって、捨てられると化け猫になるんでしょ？』
「あのなぁ……お前と一緒にするな。俺は立派な神の使いなんだぞ？」
またもや知らないワードが出てきてぽかんと口を開けると、彼のふわふわの耳が面倒くさそうにぺたんと下がった。
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ふわぴ(プロフ) - ビー玉さん» ありがとうございます…！嬉しいお言葉ばかりでものすごくモチベに繋がりました。これからも丁寧な表現と読んでいて楽しいお話が書けるよう頑張ります！ (5月25日 13時) (
レス) id: 159c9c50ae (このIDを非表示/違反報告)
ビー玉(プロフ) - めっちゃ好きです！個人的に特に好きなお話は傷ごと愛してです。特に最後のページでまるでその世界を眺めているような柔らかな感じが顕著に感じられて思わず涙が出でしまいました。いつも美しい作品ありがとうございます。これからも応援してます！ (5月22日 1時) (レス) @page20 id: 7a07f59bfb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ふわぴ
| 作者ホームページ：http://urana
作成日時：2022年8月1日 14時
