+ ページ2
**
『だ、大丈夫ですか？驚かせちゃってすみません』
「いや大丈夫っていうか……お前はなんなんだ？どうして俺と同じサイズなんだ？」
『へ？サイズ？』
彼女はぽかんとした顔のまましばらく動きを止めた。
うーん、こいつも俺と同じように薬を飲んで小さくなったのだろうか。でも小人化の薬を飲んだのは俺たちだけのはず。
それにこいつが近づいてきたことに気づかなかった説明にはならないだろう。
おもちゃの家なんてちょっと歩くだけでもミシミシとうるさいのだから普通足音で気づくはずなのに。
しかし、俺の疑問を解決するれっきとした証拠は、彼女の背中でぱたぱたと羽ばたいていた。
『うーん、あなたも迷っちゃったのかと思って声をかけてみたんですけど……ちょっといいですか？』
「は、なに……ちょ、おいどこ触ってんだ！？」
『あれ？ないなぁ』
いきなり顔を寄せてきたかと思えば彼女は俺の背中をぽんぽんと触り始めた。何かを探っているかのようなその手はなかなか動きを止めない。
おかしいなぁと不思議そうな顔をする彼女を引き剥がし、警戒した俺は距離を取った。
「なんなんだよいきなり触ってきて」
『あ、ごめんなさい。でもあなた妖精じゃないんですか？』
「は？妖精？」
『はい！私みたいに羽根があるかも〜って思ってたんですけど……』
そんな発言をした彼女に、思わず俺は目を疑った。なぜなら彼女はぱたぱたと軽やかに部屋の中を飛び回りだしたのだ。
妖精って本当に存在するのか。本でしか読んだことがなかったけど……
でも俺にはない2枚の羽根を見るに、彼女は本物の妖精なのだと実感させられる。
「俺は妖精じゃない。人間だ」
『えっ……人間？人間って、あのおっきい人間ですか？』
さっきいた人たちみたいな、とドアを指す彼女。きっと先程まで部屋にいたきりやん達のことを指しているのだろう。
やたらと落ち着きのない彼女を大人しくさせるためにも、俺はとりあえず自分の置かれた状況を説明した。
「……という訳だ。だからしばらく小さいままで過ごさないといけない」
『へえ、そうなんですか。なんで戻らないんでしょうね？』
「さあ、それが分かったら苦労してないさ。……で、お前は？」
『えっ、私ですか？』
「そう。俺妖精見たの初めてだからさ、お前のこと教えてほしいんだけど」
どうせ暇だったんだ。
未知の存在と対話するなんて、そんなの最高の暇つぶしになるに決まっているだろう？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 479人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふわぴ(プロフ) - ビー玉さん» ありがとうございます…！嬉しいお言葉ばかりでものすごくモチベに繋がりました。これからも丁寧な表現と読んでいて楽しいお話が書けるよう頑張ります！ (5月25日 13時) (
レス) id: 159c9c50ae (このIDを非表示/違反報告)
ビー玉(プロフ) - めっちゃ好きです！個人的に特に好きなお話は傷ごと愛してです。特に最後のページでまるでその世界を眺めているような柔らかな感じが顕著に感じられて思わず涙が出でしまいました。いつも美しい作品ありがとうございます。これからも応援してます！ (5月22日 1時) (レス) @page20 id: 7a07f59bfb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふわぴ
| 作者ホームページ：http://urana
作成日時：2022年8月1日 14時
