アクリル恋模様 (ページ10)

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『でもさあ、それってなかむの自己完結じゃない？私が幸せかどうか分からないでしょ』
「そんなわけないじゃん。だってAは俺のこと大好きでしょ？」

話すこともなかったから先程の会話をなんとなく続けてみたけれど、やはり彼は自分の考えを曲げるつもりなんて微塵もないらしい。
その自信は一体どこから出てくるんだろうか？

まあその考えも完全に間違いというわけではないんだけど……

ご機嫌そうに鼻歌を歌うなかむは私の髪を丁寧な手つきで1本にまとめて、水色のリボンで最後の飾り付けをした。

「ほらかわいい！ね？俺がいればAのことを世界で1番かわいくしてあげられるんだよ？」
『……でも、私ポニーテールよりツインテールが好きなんだけど』
「気のせい気のせい！ねえ見て、リボンも俺の色。そのふわふわの部屋着も綺麗に塗った爪の色もぜんぶぜーんぶ俺の色だよ！」

彼は後ろから私に抱きつきながら、そのまま手鏡を私の方に向けた。
そこには彼氏によって毛先を綺麗に整えられて、セットまで完璧にされた虚ろな目の女がこちらを覗いていた。

ここで私がもっと生き生きとした目をしていればただの幸せなカップルになれてたのかな？

『はぁ……少しは私の言うこと聞いてほしいなダーリン』
「え、なに夫婦ごっこ？あはっ、ほんとかわいいなぁ俺のハニーは」

大層幸せそうな顔をしたなかむは私にすりすりと頬擦りをした。
まるで小さな子供が大切なお人形を抱きしめるような、そんな感じで。